コロナ対策!おうちでできるストレス解消&養生法

新型コロナウィルス感染症の影響が日に日に増している今日です。医師でありながら感染症の専門家ではない自分にできることは何かと考えて、これまで「ストレスマネージメント講座」「マインドフルネス講座」や診療の中でお伝えしてきたセルフケアの方法を、このコラムに綴ることを思いつきました。人類はこれまで幾度となくパンデミックや難局を乗り超えて今に至っているのです。今回もみんなで手を携えて乗りきっていきましょう!

※ 「はじめに」を最初にお読みになってから、各項目へお進みください。
※ 今回のコラムは当院のweb制作担当者のご支援を得て作成されています。

< 掲載内容 >

・はじめに

a)取り急ぎやってみたいこと
1.笑う
2.誰かと今の状況をシェアする
3.呼吸にあわせて体を動かす
4.食べる、出す、眠る、日常生活をキープする
5.多すぎる情報をシャットアウトする
6.リラックスする時間をキープする
7.状況が許せば、家の外にでて自然に触れる
8.家族がいれば、お互いにマッサージしあう

 

b)ちょっと気持ちに余裕ができて取り組みたいこと
1.今の状況を受け入れる
2.家でもできる生きがいを見いだす
3.マインドフルネス瞑想
4.リラクセーション技法を身につける
5.体の調整:「頭寒足熱」をめざす、冷え症の解消、脱メタボなど
6.免疫力アップの食養生に取り組む
7.家族がいれば、家族で料理するなど何かに取り組む
8.大掃除などいつもはなかなかできないことに取り組む

※ コラム記事は「はじめに」下の「各タイトル見出し」をクリック頂くと展開されます。

新型コロナウィルス感染症が出現して、さまざまな心配・不安が噴出してきているようです。新しい型の未知のウィルスであること、治療法が確立されていないこと、重症化し死に至る場合があること、医療崩壊の可能性があること、ウィルスは目にみえない一方で、調べれば感染の有無は目にみえること、知らないうちに周囲や他人に迷惑をかけてしまう恐れがあること、経済的な問題がでてきていること、終息の見通しが立たないこと・・・あげればきりがないですね。これは多くの人にとって、相当にストレスフルな状態だと考えます。

私が住んでいる地方都市では、今のところ、感染者は海外や中央の都市から戻られた方が中心という状況です。なので、東京に在住の方などとは少々事情が異なるかもしれませんが、私の周りの方たちの今の状況に対する反応は様々で、平静に感染防止に努めていらっしゃる方が多い一方で、非常にナーバスになっていらっしゃる方もあり、また、感染防止にあまりにも無頓着ではと思う方も時にいらっしゃいます。私は感染症や公衆衛生の専門家ではないので、私にできることは限られていますが、心身症の治療家としてはナーバスになられている方がとても気になるところです。私の住んでいるような田舎では高齢者の方の割合が高いのですが、心配のあまり家にじっと閉じこもったきりの方も多いと聞きます。

心配を抱えた状態、ストレスを抱えた状態のままでいると、不安障害や抑うつなど心の問題がでてくるとともに、ウィルスから自分を守る最後の切り札ともいうべき「免疫力」が落ちてしまい、結果としてウィルス感染症にかかりやすくなることが懸念されます。昔から「病は気から」ともいいます。もちろん、今回の新型コロナウィルス感染症の病原体はウィルスですが、でも、皆さまご存知のように感染しても症状のでない人もいれば、重症化し死に至る人もいるのです。それには元々の体質の差もあるでしょうが、それを補い免疫力をアップさせるべく、自分で心身を整える養生も大事なのではないでしょうか?

ワクチンや特効薬の開発にはもう少し時間がかかるようです。外出自粛の今、ストレスを解消し心身を整えるために「自分で、おうちでできること」をこのコラムで提案していきたいと思います。おうちでできることはたくさんあり、その全部をしないとうまくいかないわけではありません。また、これまで身につけてきた健康法・養生法が既にそれぞれの方、ご家庭であると思います。経験や個人差は大いに考慮されるべきです。ですから、「これなら、やれる」「これをやったら自分は安心だ!」という感覚の持てるものをいくつか選んで試して頂ければいいと思います。また、実行してみて、自分の反応を感じてみて、随時ご自身にあうように修正してください。必要に応じて専門家の手を借りることは大事ですが、基本、自分の主治医は自分だという心づもりが必要です。心の持ちようや生活習慣を変えることで、実際に免疫力は変わるのです。

それでは、a) 取り急ぎやってみたいことと、 b)ちょっと気持ちに余裕ができて取り組みたいことにわけて、順次、綴っていきたいと思います。

a)取り急ぎやってみたいこと

コロナ対策ストレス解消法&免疫力アップの一番手は「笑う」です。これだったら簡単にできませんか?できれば心から笑いたいところですが、最初は無理やりでもOKです。お年を召してくるにつれて、一般に笑いは減ると言われているので、意外に難しいと感じられる方もいるかもしれませんが、やろうと思えばやれますよね?

もし自然に笑うのが難しければ、最初は鏡をみて口角をあげてみるなど、作り笑いのトレーニングからしましょう。免疫力がよくなるというメリットがあります。無理やりにでも、とにかくやりましょう・・・そうやって笑顔をつくってみると、自然に楽しい気持ちになってきませんか?私たちの体には、笑いの筋肉・神経システムが存在するのです。顔の筋肉が笑いモードになると、そのシステムが働いて気持ちも楽しくなるのです。

それから、これまでに大笑いした経験があれば、それが役に立ちます。作り笑いのトレーニングに続けて、鏡をみながら一点に集中して、その時の記憶をぼ~っと思い出していきましょう。その時のこと、あなたはどこにいて、何に大笑いしましたか?誰と一緒でしたか?その時のあなたの顔はどんな感じだったでしょう?くしゃくしゃになっていましたか?笑い過ぎて、涙がでていたかもしれないですね。お腹がよじれていたかもしれません。それをもう一度じっくりと味わうのです。すると、笑いはもう簡単です。

それから、これまでとおりだったら吉本新喜劇に行ったりするのもお勧めなのですが、残念ながら今は無理です。なので、おうちでお笑いのテレビ番組やDVDをみましょう(眠りの問題があるので、できれば日中に)。もし家族に、よく笑う人、子どもなどがいれば、彼らと一緒に見ることです。笑いは伝染します。彼らの笑いに身をまかせましょう。

私のおすすめは「笑点」です。それから、先日、お亡くなりになられた志村けんさんの追悼番組をみてもよいかもしれないですね。追悼の番組とわかっていて笑わせてくれる、本物のコメディアンだと思います。このような方は亡くなってなお、多くの人の胸の中で生き続けるのでしょう・・・話が脱線しました、元に戻します。

笑った時、脳内にはエンドルフィンやセロトニン(幸せホルモン)が分泌されるらしいです。コルチゾール(ストレスホルモン)の減少や、免疫細胞の一種であるナチュラルキラー細胞の活性が適正化されることも報告されています。

笑いの効能については、少し昔の本にはなりますが、米国の医療ジャーナリストとして著名なノーマン・カズンズが書かれた、「笑いと治癒力」という本も参考になるでしょう。自身の難治性の膠原病(免疫システムの異常によりおこる)をいかに克服したかが詳細に書かれています。

最近では「笑いヨガ」を教えてくれる講座なども増えてきました。今は直接教えてもらうことは難しいかもしれませんが、ネットで検索してみてもよいかもしれませんね。また、「パッチ・アダムス」という笑いを医療に取り入れた実在のドクターをモデルにした映画もあります。どうぞご参考に。

不安を口にされる方が増えてきました。あまりにも強い不安を聞くとご自身も不安になってしまう場合もあるでしょうから、ちょっと相手を選んだほうがよいかもしれませんが、基本、誰かと今の状況について愚痴を言いあったり話し合ったりシェアするのはよいことだと私は思います。無料通話アプリなどもあるし、通信機器が発達してとても便利な世の中ですから、おうちにいても遠くにいる人とも繋がれますよね。「はじめに」でも書いたように、実際、いろんな心配事が考えられ、不安を感じて当たり前の状況です。誰かと今の状況をシェアできる場合は、機会を見つけてどんどんしたいですね。

あなたが自分の気持ちをシェアしたいのは誰ですか?お友達でしょうか?家族でしょうか?職場の人でしょうか?もし周りにシェアできる相手がいなければ、旧友に連絡とってみるなど今からでも相手を作っていきたいところですが、とりあえずは自分の気持ちを言葉にすることから始める、たとえば、紙に書き出してみるとよいと思います。

それとも、「心の友」に話してみますか?小さい頃、お気に入りのぬいぐるみや優しいおばあちゃんにお話をして心が落ち着いた経験はないでしょうか?目を閉じて、あの懐かしいぬいぐるみにむかっているつもりで、今の気持ちを話してみてもよいかもしれません。もし大好きだった人がもうこの世にいないのであれば、ご仏壇の前で語りかけてみてもよいかもしれません。

自分の気持ちを口にすると、物事がはっきりしてくると思います。ぼんやりと感じていることを言葉にすることで、自分の感情がはっきりしてくるし、状況も整理できて何かしら解決の糸口が見えてくるかもしれません。誰かとシェアするのであれば、相手の反応や、相手の人の話を聞いて参考になることもあるでしょう。自分と同じような思いでいたのだ、自分は一人ではないということに改めて気づくこともあるでしょう。

心理カウンセリングの基本は「傾聴」だと言われます。それは正しいだとか間違っているだとか自分の価値判断を押し付けずに、批判をせずに、その人の話を最後まで聴くということです。友達や家族と話す場合は、心理カウンセリングとは異なるでしょうが、ちょっと心理カウンセラーになったつもりでお話を聴く側に回ってみるのも新鮮な経験かもしれないですね。特にあなたが小さい子供さんをお持ちならば、その子の話をじっくり聴く機会をこの際設けてみてはいかがでしょうか?

子どもも子どもなりに、今の状況から何かしら感じているものです。それを口にだし、親がそのように感じるのももっともなのだと肯定してあげることで、子どもは落ち着きを取り戻すでしょう。お風呂に入っているとき、夕飯のあと、眠る前など、あなた自身がゆっくりした気持ちになれる時のほうがよいと思います。子どもは親の状態を敏感に感じとっているものです。親にゆとりがないと、子どもは話す気持ちになってくれません。

ただ、話を聴く側としては、深い話を探り出そうなどとはしないことです。子どもはそんな話をするようなつもりはなくて、軽く他愛のない話をして一緒にいることをただ楽しみたい、味わいたいだけかもしれません。その子に合わせてあげてください。(注:あまりにも親自身に余裕がない時は、本職の心理カウンセラーなどの力を借りる時かもしれません)

時には話を聴いてもらったり、時には話を聴く側にまわったり、お互い、支えあっていきたいですね。まずは、誰かに連絡してみませんか?

前々回のコラム、「笑う」なんて自分にあってない~というあなた、あなたは一度、深くため息をついてください。ため息をつく、ということは「深く息を吐く」ということです。深く息を吐く「深呼吸」はどのような時にしますか?たとえば緊張した時、なんとかいつも通りに戻りたいと深呼吸するのではないでしょうか?「ため気をつく」というのは、あなたの体に、いつも通りに戻る・自分で自分をよくしようとする「自己治癒力」がある現れ、でもあるのです。

今回は「ストレスと闘争・逃走反応」について簡単にお伝えしようと思います。私たちの体にはこの「ストレスと闘争・逃走反応」というシステムが組み込まれています。ストレスがかかると、人は闘うか逃げる、ということです(別のシステムを使って、失神・気絶することもできます)。

わかりやすいシチュエーションとして、「森でクマに出くわす」というシチュエーションでは、あなたはどうしますか?闘いますか?逃げますか?いずれにしても、目を見開き手足に力が入り「ハッハッ」と呼吸は浅く心臓は早鐘のよう、なモードになるわけです。この時、血圧・脈拍数・血糖はあがり、手足の先の小さい血管は収縮し冷たくなり、血液は固まりやすくなっています。私たちの体を勝手に調節してくれている「自律神経」のうちの「交感神経」が優位な状態になっています。そして、無事に闘い終え、逃げおせたら、どうしますか?安全な場所で休息しますよね?腰をおろして汗を拭って深い息を吐くかもしれません。闘いや逃走でエネルギーをたくさん使ったのですから、今度は補充・充電する番です。食べ物を体に取り入れ、消化吸収します。ゆったり呼吸をして新鮮な空気を取り入れます。手足の先まで温かく血流が巡って必要なものが届けられます。体内にがんやウィルスがいたら、それをやっつけておくのもこのような時です。このゆったりしたメンテナンスモードでは「自律神経」のうちの「副交感神経」が働きます。ただし、ストレスはあってはダメ、というわけではありません。ストレスがないとこのシステムは鈍ってしまいます。緊張モードがあって、ゆるゆるモードがある、そしてまた緊張モードがあって、ゆるゆるモード、という具合に、波のようになめらかに上下しながら続いていけば、それでOKです。ある程度のストレスは必要なのです。

ですが、ここで今の状況を考えてみましょう。津波のようにストレスがわ~っと押し寄せてきていませんか?常に緊張状態にありませんか?いつウィルスに感染するのだろう?いつ命を奪われるのだろう?と頭の中で警報アラームが鳴り響いたままではありませんか?警戒は大事ですが、いつまでもこの緊張モード、交感神経モードを続けていると不具合がおきてしまうし疲弊もします。休息が必要なのです。休憩してメンテナンスしておくことによって、本当にそれが必要な時にしっかり闘ったり逃げたりできるのです。あなたは幸い、安全な我が家、おうちにいるのですから、今はアラームをoffにして警戒を解いて、心と体をメンテナンスしましょう(買い物などで外に出る時はある程度、警戒モードに切り替えてくださいね!こちらは簡単ですよ。自然にできます。自分の命を守りたいという本能は大きいです)。

一息、息をはくだけでも副交感神経のゆるゆるモードにもっていくことは可能ですが、十分にできるようになるためには訓練の必要があります。これまでにヨガや合唱・吹奏楽などで呼吸法を学んだ方は、それでOKです。好きなのであれば、それを続けましょう。周りに音にナーバスな方がいらっしゃる場合もあるでしょうから防音の問題に気をつけたほうがよいかもしれませんが、歌う、楽器を弾くのはストレス解消法としてとても優れています。また、ヨガでは理想的な呼吸の仕方を教えてくれますが、誰でもが理想的なやり方を最初からできるわけではないので、ゆったりしたい時は、まずは、「吐く息を意識する」ことから始めていきましょう。できれば、細く、長く、息を吐いていきます。吐ききってしまえば、吸う息は自然に体に入ってきます。また、細く、長く、息を吐いていきましょう。吸う息は常に鼻から、にしてほしいですが、吐く息は口からでも鼻からでも構いません(もしラクにできるのであれば、鼻から吐くほうがおすすめではあります)。

(注:鼻が詰まっている場合は、小鼻の横に鼻が通るツボがあるので、そこを何度か押してみるとよいと思いますが、必要な場合は薬を飲むなど、そこからしていく必要があります。口呼吸をやめて鼻呼吸をすることは、感染防止の面からも、心身の安定を得るためにも、大変重要です。たかが鼻づまり、などと言わずに、真剣に取り組む必要があります)

胸や肋骨・わき腹のあたりに手をあてると、自分の胸郭が呼吸にあわせて動いているのがよくわかると思います。息を吸うときにあばら骨がパラパラっと広がって胸が前にでて大きく広がり、息を吐くときにはあばら骨がしゅ~っとしぼまって胸が小さくなっていきます。ご自身の体をよく味わってください。意識すると、呼吸はどんどん深くなっていきます。ただし、胸でやる呼吸はどちらかというと活発になるようなものなので、ゆったりモードにしたい時は腹式呼吸をします。息を吸うときにお腹を膨らませて、息を吐く時にお腹をしぼませます。おヘソに両手をあてると、お腹の動きを感じやすいでしょう。息を吸うときおヘソは大きくなって前にでていくような感じ、息を吐くときおヘソは小さくなってお腹に潜り込むような感じ、背骨にくっついていくような感じ。イメージを使ってもいいですね。お腹の中に風船があるとイメージします。息を吸うとき、お腹の風船はパ~ンと膨らんでいきます。息を吐くとき、お腹の風船はしゅ~っとしぼんでいきます。お腹の風船を膨らませたり、へこませたり、お腹の動きを意識しながら何度か息を吸って、そして吐いていくと、息を吐くごとに心とカラダが緩んでいくことに気づいていくでしょう。

この呼吸法に慣れてきたら、いつものストレッチをこの呼吸法にあわせて行ってみてください。たとえば、息を吸いながら手を挙げ、息を吐きながら手を降ろします。呼吸にあわせてストレッチをする、それはヨガです。全くの初心者であれば、本来はヨガ教室で習ったほうが安全だし、はるかに上達できると思いますが、このご時世なので仕方ありません。DVD付の本を購入してもよいでしょうし、ヨガの動画はネット上にもたくさんでていますので、それを利用してもよいかもしれません。インストラクションに従って、最初は決して無理をせず、自分の7割方の力を使うつもりで行うと安全にできるはずです。ヨガのポーズの中には緊張するもの、弛緩するものがあります。つまり、交感神経が優位になるものがあれば、副交感神経が優位になるものもあります。それを組み合わせて行うことで、自律神経を整えていくこともできます。

呼吸法が気に入った方は、是非、ヨガをお極めください。様々な呼吸法があり、自分の心と体を治めるために、古代から賢人たちがいかに工夫を重ねてきたか、その素晴らしさに目をみはることでしょう。「ヨガ」とは、「統御する」とか「結びつける」などの意味です。人は古から、暴れまわる自分の心に手を焼いてきました。暴れまわる数頭の馬、それを制御する手綱あるいは御者、それがヨガです。呼吸法やポーズをとる以外にもヨガの行法は様々ありますが、まずはいつものストレッチを、呼吸にあわせてやってみませんか?

基本的な日常生活をキープするのは大事です。学校が休みになって家にいることになった子ども達は特にそうでしょう。できるだけいつも通りにということで学校と同じように時間割を決めるというのも一つの手ですが、この方法がみんなに合うとは限らないと思います。ガチガチに時間割を決めてしまうのはつまらないし、せっかくなので今みたいにいっぱい時間を使えて初めてできるようなことに取り組んでも有意義で楽しいかもしれないですね。というわけで、眠る時間くらいは多少、前後しても構いませんが、朝何時に起きるか、それだけは決めておきましょう。そして、それをいったん決めたら、その時間はしっかり守るようにします。親のアドバイスは必要でしょうが、最終的には子どもに自分でその時間を決めさせるとよいでしょう。子どもは意外にまじめな場合が多く、自分で決めたことは守ろうとするようです。遮光カーテンは取り払い寝室に朝の太陽の光が入るようにすると、私たちの体は太陽の光で体内時計がリセットされるようにできているので、よりスムーズに起きられることでしょう。

インドの伝統医学、アーユルヴェーダでは6時よりも前に起きることが勧められているようです。特に日の出前の時間は最も生命エネルギーに満ちているのだとか。その時間にヨガをしたり歩いたりすると、たしかに気持ちよく、生命エネルギー「気」が満たされる感覚があります。うつ傾向で早朝に目が覚める場合もあるでしょうが(あまりひどい時には精神科や心療内科に相談すべきではあるでしょうが)、私自身はそんな時には体が「気」を欲しているのだと考えて、二度寝をするのではなくて、あえて起きて深呼吸や瞑想・ヨガ・気功のまねごとなどをするようにしています。また、漢方薬を用いて気を高めることも可能です。それから、一般に睡眠時間は6~8時間必要といわれますが、ご自身に適切な睡眠時間をはかる目安としては、日中の活動に支障がないかどうかがあげられます。なお、昼寝をする場合は、夕方などではなくて早めの時間に、睡眠のサイクルにあわせて15分程度にとどめるとスッキリしやすいようです。

私はこの数年、漢方外来の仕事をさせて頂いていて、毎回の診察時に患者さんに最低限聞くのは「食欲はあるか?食べられているのか?」「排便は順調か?出ない日が多少あっても排便でスッキリできているか?」「ぐっすり眠れているか?」この3点です。これらがOKであれば、ある程度、健全と考えてよいでしょう。ある程度体を動かしていないとお腹はすかないでしょうし、便もでにくいでしょうから、その二つが整っているということは、日中、ある程度動けているという証でもあります。また、眠れるということは精神的にそこまで病んでいないし、眠っている間に自己治癒力が発動できていると解釈しています。

便が滞っていると腸内の環境は悪化します。腸は免疫の要でもあるのです。発酵食品を積極的に取り入れてお腹の中のドキンちゃんを増やしておきましょう。免疫力をアップする食養生については後程、詳しくお伝えするつもりですが、まずは、いつも通りに食べて、いつも通りに便が出るとよいですね。食欲のない場合、時にはそのまま胃腸を休めて食べ過ぎの調節をするとよい場合もあるでしょうが、「これがいいと本に書いてあった」とか「あれはダメ、体に悪い」とか頭であれこれ考えずに、自分が食べたいと感じるもの、これだったら食べられるというものから、とにかく食べると、それがきっかけとなっていつものように食べられるようになる場合もあると思います。このようなお悩みに対しても漢方薬は役に立つ場合が多いものです。

また、寝つきの悪い方が増えてきているようです。自分が眠りにつく時間から逆算して1~2時間前から携帯やパソコン、テレビは見ないようにしましょう。ブルーライトは私たちの脳を昼間の青空を見ているような錯覚に陥らせます。脳が昼間と同じように活動的になると、寝つきが悪いのは当たり前です。寝る前には、前回のコラムで紹介したような呼吸法やヨガをするとよいでしょう。もっと言えば、寝る前、1~2時間前にお風呂に入っておいて、その後にリラックスのための時間をもつというのが理想的です。お風呂の後も、どうしても人の声などがあったほうがよいという方にはテレビではなくてラジオのほうをお勧めします。また、足裏のマッサージなどもお勧めですが、これについては後程、別の項で改めてお話しする予定です。アロマを利用するのもよいですよね?デイフューザーがあればもちろんよいですが、簡単には、陶器のカップにお湯をはってそこに数滴オイルをたらしても、同じようにアロマが部屋中に広まって効果を得ることができます。

それから、寝る前にいろいろ考えだす方もいらっしゃいますが、寝る前はきっぱりと頭の思考はストップさせましょう。マインドフルネスやヨガを含めた呼吸法がそれには役立ちます。または、自分を幸せな気持ちにさせてくれる記憶の引き出しをつくっておくのもよいでしょう。前もって、どんな記憶でもよいので、幸せを感じた時の記憶を思い出して、リストアップしておきましょう。寝る前には、そのリストアップした記憶の中から、これだ!と感じるものを選んで、それを再体験、味わっていきます。そして、その気分のまま眠ってしまいましょう。私は子どもがまだ赤ちゃんだった時のことをよく思い出します。なかなか子どもが授からずに辛い思いをした時期もありましたので、尚いっそう、子どものスヤスヤ眠る寝息などは私にとって幸せの象徴です。それを感じながら眠ると、子どもが大きくなった今でも、ぐっすり気持ちよく眠れるのです。家族や友人とお気に入りのレストランで楽しくお喋りしながら美味しいものを食べた記憶もよいですね。「笑う」のページに書いたような「大笑いした記憶」も幸せな記憶の一つでしょう。私はそうなのですが、みなさんはいかがでしょうか?たとえば、中高校で運動系の部活なんかをしていて充実した練習の後に電車に乗って帰るような場合、あのゴトゴト揺れるリズムとともに幸せな深い眠りに落ち込んだ記憶のある方はそれがよいかもしれませんね(注:どうしても思考が、しかも自分にとってどうしようもない不健全な思考が頭から離れないという方には、一度機会をみて、心の奥底にある深層心理・潜在意識を整理整頓するような心理療法を受けられることをお勧めします)。

「食べて、出して、眠って」何があったとしても、まずはいつも通りの生活をキープする、それも自分の心身を安定させる一つの重要なやり方なのです。機械的にというよりも、できれば、心持ちゆっくり目に、それを味わいながらやってみてください。外出はままならないかもしれませんが、それでも美味しい料理を食べることができ、衛生的な水を使うことができ、電気もとおっていて便利な生活ができている・・・「当たり前」の生活ができる幸せも感じられることでしょう。

毎日、毎日、コロナ関連の報道の嵐です。今日新たに感染が判明したのは○○人、亡くなられたのは○○人、この地域では・・・この国では・・・。たしかに情報は必要です。でも、この事態が未曾有の大変な事態であることは、もう既に、大体わかってきているのではないでしょうか?

既に頭の中の警報アラームは鳴っています(警報アラームについては前々回のコラムを参照されてください)。これ以上自分を不安にさせるとわかっているような情報はもうシャットアウトしてしまいましょう。特に、自宅でテレビをつけっぱなしにしている方は要注意です。自分で選んで詳細をみることのできる新聞・雑誌・ネットなどとは違って、テレビは一方的にテレビ局の作成した内容がこちら側に流れ込んでくるので、番組をよくよく選ばないと心の健康には危険だと言わざるを得ない状況だと私は思います。しかも、ラジオとも違って、テレビは聴覚だけではなくて視覚的にも大きなインパクトを私たちに与えるのです。

冷静に理性的にニュースを捉えることのできる方はまだしも、ふだんドラマや映画を見ているときにその世界に入り込んでその登場人物になりきったかのように感情移入して泣いたり笑ったりされるような感性の優れた方、お友達の話に涙を流すような情の深い方は、コロナ関連であふれたテレビをみる際には本当に気をつける必要があるのです。芸術家の方はもちろん、子どもや高齢の方も一般に感性が勝っていると言われます。また、一般に理性がまさっていると言われる大人であったとしても、今は感性や情動・本能のほうがまさりがちになっているかもしれません。

私達の多くはこのコロナ関連の騒動を、自分の命に係わることと認識しています。命の危機にある時、私達の多くは理性よりも情動や本能がまさった状態、一種の「変性意識状態」「トランス状態」「催眠状態」になりがちです。そのような時に、感情を揺さぶられながら何度も繰り返して聞く言葉・映像は「強力な暗示」となり、私たちの心の奥底の部分、潜在意識に埋め込まれ、それは心身に、私たちの物の考え方・言動に大きな影響を与えていくのです。

何のために情報は必要なのでしょうか?日本・世界の各地で困っている方々のことを知り、自分たちのこれからに活かしていく、あるいは、彼らに共感し何か手助けをしたいと考えることはとても重要なことです。ですが、それを実行するためには、自分自身が心身ともに健やかでいる必要があります。自分で自分に毒を盛ってはいけません。多すぎる情報はシャットアウトです。自分が健やかでいられるよう、心の奥底にある温かいものをさらに育んでいきましょう!次回は、「リラックスする時間をキープする」それから「自然に触れる」「マッサージしあう」です。

ちょっとこれまでのコラムを復習しておきましょう。とりあえずは、笑って誰かと今の状況をシェアして、呼吸にあわせて体を動かしつつ日常生活を保てるとよいですね。多すぎる情報はシャットアウトです。そして今回は「リラックスする時間をキープする」ということについてお話したいと思います。

これまでに書いてきた「笑い」や「呼吸にあわせて体を動かす」も自分をリラックスさせるよい方法です。そのほか何であっても自分が心からリラックスできるというのなら、とりあえずそれでOKです。心身の調子がよくない時、ストレスがかかっている時は、大好きな趣味をお持ちの方はそれにかける時間をいつもよりも多めにとるように心がけてください。手芸をするなり、音楽を奏でるなり、絵を描くなり自分の好きなことをしましょう。それから、一人、ぼんやりとすることがリラックス法だという方はそれでOK、にぎやかな家族のお喋りに耳を傾けることがリラックス法だという方はそれでOK。土いじりもいいですし、お茶をゆっくり飲んでもOKです。何にも趣味がないという方は、もっと若かった頃に熱中したものがあれば、それを再開してみてもよいのではないでしょうか?

皆さんはリラックスする時間をキープできていますか?時には、自分がゆっくりすることに対して罪悪感をもつ方がいらっしゃるかもしれないですね。無意識のうちにスケジュール帳を予定でいっぱいにする方もいらっしゃることでしょう。さらに言うと、ゆっくりしているとイヤなことが頭に浮かんできてそれを考え出してしまうのをテレビやゲームで紛らわしている、という方もいらっしゃるのではないでしょうか?もし機会があれば、そのことについて自分の心の奥底を見つめなおす心理療法を受けると、ラクに自然に、ゆっくりできるかなとは考えますが、まあ、まずは、「意識して」リラックスする時間をキープするのも一つの手でしょう。コロナ対策として、免疫力をあげる治療だと思って、それから自分が周りをサポートできるようになるそのベースとなるものだと心得て、しっかり時間をとっていきましょう。

注意して頂きたいのは、テレビやゲームです。テレビを見ている時、ゲームをしている時、それをするのが好きだからと言ってリラックスできているかというとそうでもないでしょう。テレビをぼんやりとみて休まっているつもりでも、休まっていない場合が多いです。テレビは強烈に私たちの感覚を刺激します。眼は受け取った光信号を電気信号に変え脳に送り頭の後ろのほうで映し出しています。かなりの刺激であり、脳は休まっていないのです。時には人間ドラマのようなもの、ほのぼのするようなゲームや映画もありますから、選んで利用すればよいでしょうが、できれば、五感がじわ~っと活性化され、終えた後に充実したゆったりした気持ちになれる趣味のほうがよいと考えます。

それから、体からリラックスするという手があります。私たちはストレスを感じると体が緊張し、体が緊張すると脳にその筋肉の情報が送られ、体の緊張を感じた脳がさらに警戒するという仕組みが働きます。どこかでこの流れを断ち切らないことには、どんどんどんどん緊張のほうへと進んでしまいます。どこかで断ち切るとすれば、体からリラックスさせるのがやりやすいやり方なのです。体がリラックスすると、心にも余裕ができてくるものです。体をリラックスさせるリラクセーション技法について後の項でしっかりご紹介したいと思いますが、この項の後半では、もっと日常的で、日本人の誰でもがやりやすいこと、お風呂に入ることについてお話したいと思います。

漢方外来をやっていて、意外にお風呂に入るという習慣がない人も多いものだということに気付きました。特に夏場はシャワーで済ますという方が多いのですが、エアコンの普及のすすんだ現代においては「冷えは夏につくられる」という話もあり、1日の終わりにお風呂に入って、その日のうちにその日の冷え・疲れを解消しておくことは心身を健やかに保つのにとても重要です。お風呂に入って体が温まると、体は自然にリラックスしていくものです。血流の流れもよくなります。新陳代謝も高まるでしょう。衛生的でもあります。それから、体温があがると免疫力もあがるのですよ。ただ、真冬の間は、寒い外気と熱いお風呂のギャップで心血管系の発作をひきおこす場合もありますから、風呂場と脱衣所をある程度暖めておいてから服を脱ぐ、足元からお湯にならしていくなどして十分気をつけないといけません。春先までは十分気をつけたほうがよいでしょうが、これから夏の季節などはその危険性も少ないですし、この機会に入浴を習慣にされてはいかがでしょうか?

通常の肩まで浸かる全身浴のほかに、半身浴、温冷交代浴、足浴などさまざまな入浴法があります。無理は禁物ですが、お風呂好きな方はこの機会に自分にあうものを研究してみても楽しいですよね。私などはかなりの寒がり屋さんなので、半身浴は、たとえバスタオルを上半身にかけていたとしても、あまり心地よいものではありません。肩まですっぽり入浴するほうが好みです。ただし、リラックスするには、あまり熱い温度は避けて、ぬるめのほうがよいでしょう。自宅にお風呂がないという方には、バケツなどを使って、少なくとも足首より上までをお湯に漬ける足浴をおすすめします。

それから、湯船に入ったまま少し体を動かしてみたり体をマッサージしてみても気持ちよいですよね。マッサージについては、次の次の項で詳しく書いてみたいと思います。どうぞお楽しみに^^

私の住んでいる地方都市と東京などではだいぶ事情が違うのかもしれませんが、もしあなたの住んでいる地域の状況が許せば、家の外にでて自然に触れることは、心身を保つのにとても役に立ちます。戸外でたくさんの人と関わるというのではなくて、一人で、あるいはご家族で、自然と関わって自然を感じるということをお勧めしているのです。

文明が発達した現代においても、やはり、人は自然の一部です。人類の長い歴史を考えれば、携帯やゲームなどが発達したのはほんのつい最近なのであり、人はずっと自然の中に生きてきて体の仕組みもそれに合うように出来上がっているというわけで、森の中など自然の中に身をおくと、心身は自然に調子を取り戻していくようです。実際、「森林浴」「森林セラピー」で検索するといろんな研究結果の情報が得られます。ストレスに対する効果、自律神経に対する効果などが報告されているようです。「マイナスイオン」や「フィトンチッド」という物質に効能があるらしいのですが、実際、森林の香り、木の香りをかぐとリラックスできるという方は多いでしょう。

森の中にいくのが理想的かもしれませんが、そこに行くまでが今の状況では大変かもしれませんし、もっと手近なところで、町の中にある公園などでもよいでしょう。私は緑が大好きです。大きな1本の木の下にいるだけで癒される気がします。ちょうど今は新緑の美しい季節です。目にも美しいですし、木を風がざわざわと揺らす音、鳥の鳴き声、少しひんやりとした空気、大地を踏む感触、そのどれもが癒しの効果をもち、相乗的に働くのだと思います。アレルギーのある方にはおすすめできませんが、木の表面に触れてみても、時には木をハグしてみてもよいかもしれないですね。一つの物質だけにとどまらない効果がそこにはあるように感じます。ですから、できれば、外に出ることをお勧めします。

日本人は自らを自然とともにあると感じ、自然の中に八百万の神々を見いだしてきました。その精神性は今でも私たちの中に脈々と受け継がれているのではないでしょうか?山岳で修業される方のご講演を聴いたことがあります。私の今回のコラムは精神的にある程度健やかな方を想定して書いているのですが、山岳修業には明らかな精神疾患をお持ちの方もいらっしゃっていて、そのような方であっても山岳修業によって改善する場合があるとのことでした。

私は「歩く瞑想の会」を時おり、近くのちょっとした森の中で開催しています。また、マインドフルネスの座学と実践をする講座はレンタルスペースで開催しているのですが、レンタルスペースで行う歩く瞑想と、森の中で行う瞑想とでは、やはり差があると言わざるをえません。はるかに森の中で行うほうがやりやすい、参加者の方も深く瞑想できるようなのです。もっとも、室内で行うことによって、ゆっくり歩く集団に対する奇異の目は避けられますから、それはそれで初めての方にマインドフルネスをお伝えしたい場合には役にたっているのですが、お勧めは森の中での歩く瞑想です(マインドフルネス、歩く瞑想については、また後日、お話する予定です)。

また、少し前に森の中でハープを弾くという講座に参加したことがあります。これも相当に気持ちよいですね。不思議と鳥たちがこちらの演奏にあわせて羽ばたいたりさえずったりしているように感じられました。森の中でのフルートコンサートを聴いたこともあります。最高ですね。

もちろん、自然の中には危険もいっぱいあるでしょう。自然の中で育ったわけではない地方都市育ちの私は、野生の深い森の中などはいろいろ心配な気持ちになる時も実際あるのですが、服装など自然の中に入る時の注意を守る、ある程度管理された森林公園を利用するなどすれば、安全に楽しめると思います。

それから、自然に触れるということでは、庭いじりや家庭菜園をするのもよいですね。土に触れると、大地の温かなどっしりとした感覚をダイレクトに味わうことができます。雑草などの植物のもつ、あふれるような生命力も感じられることでしょう。命の循環を感じるのも、そのような時かもしれません。生き物は土に還り、また新たな生を得て芽吹きます。外に出ることのできない方は、家の中に自然を呼び込んでもよいですよね?観葉植物を育ててもよいでしょう。ペットとじゃれあうのもほっとリラックスする時間でしょう。

それから、イメージの世界で自然に親しむのも、特に今のような状況ではあり、ですよね?私のイメージセラピーではクライアントさんに「自分を居心地よくさせてくれる場所」をイメージして頂くことが多いのですが、多くの方は南の島の海辺や森や草原の中など、自然の中の風景を思い浮かべられます。一度、皆さんも目を閉じて、息をふ~っと吐いて、南の島のビーチに行ってみませんか?そこにいるふり、そこにいるつもりで、熱い砂の感触、青い海、キラキラと輝く太陽の光、涼しげな木陰、気持ちのよい風、波がさ~っと打ち寄せてはひいていく音、潮の香・・・それを味わっていると、本当にその場にいるかのように心身ともにリラックスしていく自分に気づかれることでしょう。イメージセラピーのCDを利用されてもよいと思います。原体験はある程度必要ですし、機会があればどんどん実世界の自然の中に入ることはもちろんおすすめですが、イメージの力もまた、本当に大きいですよ。

これまで私たちは自然のサイクルを無視して夜にあかあかと電気を灯して活動することもあったわけですが、今後、永続する世界を目指す、自然との共生を目指すのであれば、今回は本当によい機会だと捉えることもできるでしょう。夜も患者さんの世話をされている医療福祉関係の皆様にはただただ心からの敬意を表すしかありませんが、そのようなお仕事というわけでなければ、自然のサイクルにあわせて「お日様が沈んだら休み、お日様が昇ったら活動する」というのは心身を健やかに保つコツです。お店が営業自粛や時短営業をして夜空がいつもよりちょっと暗くなった今、瞬く夜空の星を眺めて、自然を、そして宇宙を味わいながら、いつもよりちょっと早めに就寝してみませんか?

人肌に触れるということは、私たちに大きな和らぎ、安心感をもたらしてくれます。ズバリ「濃厚接触」にあたるでしょうから、今は他の人とハグやキス・握手をする場合ではないでしょうが、家族にコロナを疑わせる症状がないのであれば、家族同士でお互いにマッサージしあうのは、心身の安定にとてもよいと考えます。お一人暮らしの方もご自身の体に触れてみてください。特にご年配の方など、今まで足の裏など見たこともないという方も多いようですが、ご自身でマッサージしてみれば、「あら、こんなに足の小指の爪って小さかったのね」など、自分の体の愛おしさに気づかれるかもしれません。

自分の手であっても、他人の手であっても、人の手の温かさは本当に心地よいものです。これまでにマッサージを受けられたことのある方は、その時のことを思い出してみてください。うっとりして、大抵の場合はそのままうつらうつら眠りかけなかったでしょうか?そして、実はマッサージする側にもメリットがあります。マッサージする時、手をしっかり使うので、手のツボが刺激されますし、血流もよくなる、つまりマッサージする側の体調もよくなるわけです。

全身をマッサージするにこしたことはないかもしれませんが、時間のない時には、足の裏だけだとか、手だけだとか、耳を引っ張るくらいでも、かなりの効果が期待できます。

「リフレクソロジー」という代替療法があります。足の裏のそれぞれの部分が体のそれぞれの部分を反映しているというわけで、基本的には足の指先に近い部分が頭のほうを、土踏まずのあたりが胃腸を、かかとのあたりが下半身のほうを、という具合です。足裏をマッサージすることで、全身をマッサージされているが如くほぐれていくのです。台湾式ではかなり強めにゴシゴシいきますが、英国式リフレクソロジーのほうはソフトタッチなようです。

私は「痛気持ち良い」を目安に足裏をもんでいます。痛いのだけれど気持ちよさが感じられる、その程度の強さでマッサージしていくのがお勧めです。反射区の図をみて「この病気ならここ」と頭で考えてやるのではなくて、体で不調な部分は足裏では凝りとして反映されていますので、実際にマッサージしてみて「痛気持ち良い」凝っている部分をご自身で感じながらほぐしていきましょう。

女性はパンプスなど足先の細い靴を履くために足が固まってしまっている場合もあります。足は30個弱くらいの数の骨で構成されています。一つ一つばらけるようにほぐす感じでマッサージしていってもよいでしょう。「痛い」だけの場合は、その足の部分がケガをしているのかもしれませんので、無理をしないようにお願いします。手も同じ要領でOKです。耳も体の各部分を反映しているとされます。それから、手足をマッサージする場合は、指の付け根や爪の生え際も重点的にやってみるとよいと思います。そのような場所には東洋医学でいうところのツボが多く存在するので、ツボ押しをする・自分で指回しをするなどに加えて、もみほぐしてあげるとさらに効果的でしょう。

ただし、女性の方はちょっと気をつけたほうが良い場合もあります。妊娠中や生理中の場合、かかとのあたりは子宮の収縮を誘発する恐れがあるので避けるべきです。頭頂のツボも、月経時には刺激しないほうがよいと聞きます。エビデンスの有無はさておき、古来の言い伝えには何らかの謂れがあるはずです、先人の体験は尊重するにこしたことはないと私は考えています。

それから、夜中にトイレなどに起きて滑るという可能性のない方にという条件付きですが、ラベンダーなどのアロマの入ったオイルでマッサージするのもお勧めです。よい香りに包まれて、気持ちのよい眠りに誘われそうです。

全身をマッサージするのであれば、まずはリンパの滞りやすいところをながしてから、全体をマッサージしていくのがお勧めです。たとえば、脚であれば、親指を除く4本の手の指を平らにして、膝の裏、脚の付け根の内側のほうを下から上へ、体の末端から中央のほうへと、なでるように繰り返します。それから、足先から脚全体を同じように、下から上へ、体の末端から中央のほうへと表面を繰り返し撫でていきます。

ついでに脚のツボ押しをしてみてもよいでしょう。「湧泉(ゆうせん)」「三陰交(さんいんこう)」「足三里(さんり)」などが代表的なものです。詳しくはネットで調べてほしいと思いますが、この三つは大きなツボで、ある程度広範囲の症状に有用と考えられているものです。私は、息を吸ってその部分に親指の腹をあて、息を吐いてぐ~っと押して、息を吸って緩めて、また息を吐いて押すというふうに呼吸にあわせながら行っています。食直後や熱がある時には行わないなどの注意に気をつけて、一か所について3回くらいから、自分の体の反応をみながら始めていきましょう。

この章で、「取り急ぎやってみたいこと」はおしまいです。コロナ対策のストレスマネージメント&養生法として、本当に「取り急ぎ」やって頂きたいことを、取り急ぎ、書かせてもらいました。深く実践するには少々はしょりすぎた部分もあったかもしれませんが、お一人お一人でピンとくる方法は違うだろうということを前提に、できるだけ幅広く情報をお伝えしたつもりです。今はネットでほぼ何でも、すぐに検索できる時代ですので、私のこのコラムをヒントに、ご興味のあるところをさらに深めて頂けると幸いです。次回からは、これまでとは違って、お気軽に試せるというよりも、もう少し本格的に取り組む必要があるけれども、もしできれば大いに心身の安定に役立つであろうことを順番に綴っていきたいと思います。

b)ちょっと気持ちに余裕ができて取り組みたいこと

あなたの今の状況はいかがでしょうか?コロナの影響がでる以前の生活は、ある程度保たれていますか?全く収入の道が閉ざされてしまったという方もいらっしゃるかもしれないですね。蓄えのある方、ない方、ご事情はさまざまでしょうから、一概には言えない、本当に難しいテーマなのですが、それでも、今の状況を受け入れる、ということは心身の安定にとても重要な役目をもっていると考えます。

蓋をしてコロナなどないかのように振る舞うことは、周囲の人・社会全体に迷惑をかけるばかりか、ご自身にも有害でしょう。ご自身にコロナ感染のリスクが大きくなりますし、蓋をするのに心のエネルギーが大きく蝕まれます。蓋をしきれずに心が不安定になる場合もあると思います。遊興をしているその間は、何もかも忘れてラクかもしれません。でも、そうやって現実を見ないで時間を費やしている間に、放置され失われていくものが多々あるでしょう。もしかしたら、あなたと支え助けあうはずだった人々の信頼は、そう簡単に取り戻せるものではないのかもしれませんが、いつか始めなければ、自分が変わらなければ、事態は基本的に変わらないのです。このようなことは、今、始まったわけではないのではないでしょうか?コロナの影響でそれが顕在化しただけではありませんか?いつかは取り組む問題なのであれば、コロナの影響で時間のできた方には、今がその時なのかもしれません。

自分の状況を受け入れることは、なかなかに難しい・・・けれど、やりがいのあることです。もし、あなたが上記のような状況にあるのであれば、そんな自分をまずは認めてあげてください。現実から目を背けたことがあったとしても、逃避したことがあったとしても、それは当然のことといえるような背景・事情があったのではないでしょうか?ストレスマネージメントの基本は「ストレスから距離をおく」ということであり、それはある意味、正しい対処法でもあったのです。

自分が逃げているということに気付いて、もし何とかしたいのであれば、自分の力を高めていくことから始めてもよいかもしれません。これまでのコラムで書いてきたことが役に立つかもしれません。また、これまでも同様の困難を乗り切った経験があるのであれば、その時、何が自分に役だったのか、それをもう一度確認してください。そして、その力が自分の中に既にあることをじっくり味わってください。それから、もしあなたが敬愛するその人だったら、この事態にどうするだろうか、それを頭の中でイメージしてください。そして、その人になったつもりで行動してみてください。あるいは、誰かに一緒にいてもらえれば、誰かの愛を感じていれば自分はもっと頑張れるという場合は、どうかその人にそばにいてもらってください。これは現実にそうできれば最高ですし、現実には難しい場合には、イメージの中で、その人がその存在が(人とは限らないでしょう)そばにいて見守ってくれていることを深く味わってもよいでしょう。もし万一うまくいかない時は、機会をみて、どうぞ私たちヒプノセラピストの元を訪れてください。

自分の力がある程度高まったら、自分の問題点は何なのか、自分は何を不安に感じるのか、それを書き出してみましょう。不安はあって当たり前です。どこに住んでいるのか、どんな職業・家族関係・友人関係・経済状態・健康状態なのか、どんなふうに養育されてどのような信念・思い込みをもっているのか、など皆さん、事情はそれぞれでしょうから、具体的に何が不安なのかは人それぞれだと思います。ご自身の人生にはご自身が責任をもつべきであり、書き出した問題点にどのように対処していくかも、それぞれに異なることでしょう。すぐに解決するものもあるかもしれませんし、時間のかかるものもあるでしょう。ネットなどで情報を集めることで解決するものもあれば、それでは解決しないこともあるでしょう。

まず、ネットで情報を集めるという方法について見ていきたいと思います。新型コロナウィルス感染症については、未知の部分もありますが、既にたくさんの情報がマスコミやネットで伝えられているので、これについては皆さまのほうが詳しいくらいかもしれません。ですが、ちょっと気になることについてだけ・・・マスコミやネットの情報を受け取るときの注意についてです。その情報は本当に正確なのか、いくつか見比べて判断する必要があります。また、情報源にも注意しないと、操作された情報になっているのかもしれません。それから、その情報はあなたの状況に必ずしも合致しないかもしれません。各国の医療資源は異なっていますし、一人一人体質は違うわけですから、良くも悪くもそのままそっくり自分の身におこるとは限りません。「多すぎる情報はシャットアウトする」という項目でも書きましたが、テレビやネットの情報は「暗示」にもなります。情報は、理性的に、利用しましょう。

不安を書き出すことで、自分の漠然とした不安がはっきりとすることで、それだけでも効果のある場合があります。また、多少の不安はあってもそのままに、できないことではなくて、今、できていることに目を向けることも大事です。これまでは当たり前だと思っていたようなことや、どんなに小さいことでもOKです。今、出来ていることもリストアップしておきましょう。そして、その出来ていることを少しずつ増やしていくと、「自分はこれでよいのだ」という感覚・自信が大きくなっていって心身は安定していくことでしょう。

それから、今の状況に対し「これでよかった」というフレーズを口に出して、そして、よかった点をどんどん言ってみましょう。たとえば、私の場合は「このコラムを書くきっかけになった」「学級崩壊に陥った学校で子どもを怪我からどうやって守れるかという悩みから解放された」「家庭菜園を充実させるきっかけになった」「運動する機会が増えた」「家族の時間が増えた」などがあります。もちろん、今の状況でよくないこともたくさん起こっていますが、物事には何かしら必然性があるというか、よい側面もあるものです。それをきちんと認識しておくことも心の安定に役立つし、しっかりと受け入れるということにつながっていくでしょう。

何事も完璧を目指さない、というのも、今、大事なことかもしれません。医療も完璧ではありません。あなた自身が、私自身が完璧でないように、何事も完璧ではないかもしれない、でもそれを許し受け入れると、また新たな境地が生まれていくことでしょう。

さまざまな個人的な不安の他に、多くの方に共通した不安もあると思います。その一つは「見通しが立たない」という不安ではないでしょうか?今、この文章を書いている2020年4月末の時点で「長期化する」ということが言われ始めていますが、どの程度長期化するのか、これからの暮らしはどうなっていくのか、見通しが立たないと言わざるをえません。「先の見えないトンネル」という表現が使われることもありますが、それで私が連想するのは不妊治療です。不妊体験のない方にはわかりづらいとは思いますが、周りではじゃんじゃん子どもが生まれているのに自分になかなか授からない、どんな治療もなかなか奏功しないということになると、光の見えないトンネルに入り込んでしまったような気分に陥るものです。私は最初の子どもを授かるまでに6年間、そのトンネルの中にいました。そういう時にどのような対処が功を奏する場合が多いかというと、「ずっと先のことを考えるのではなくて、今、この時に意識を向ける」「1日1日を充実させる」「できることをコツコツ地道にやっていく」といったことでした。結局、自分にできることをやるしかないのです。毎日の暮らし・自分の内面を大切にし、後は「なるようになる」という精神でいると、いろんなことが周りで起こっても、柳のようにしなやかに柔軟に対応していけるようになると私は思います。そうしていると、意外なところで、意外なタイミングで、展望が開けていく場合もあるでしょう。「忍耐」「待つ」ということも大事かもしれません。

そしてもう一つ、多くの方に共通した不安というのは「死への恐れ」だと思われます。おそらく、多くの方の個人的な不安の根底にあるのは、これではないでしょうか?死んだらどうなるのか、それがわからない・・・これだけ科学が発達しているに関わらず、いまだに科学的に正しい答えというものはないのです。ですが、この問いに対しては幸いなことに、古から様々な賢人・宗教家・哲学者などがその考えを書き残してくれています。仏教やヒンズー教では「輪廻転生」という考え方があります。ヨガの聖典バガバット・ギーターでは、「死」を「肉体の衣を脱ぐ」と表現しています。キリスト教では死後には最後の審判を待つ、ということになっているようです(原始キリスト教には「輪廻転生」の考え方もあったようです)。あるいは、重病や事故にあって臨死体験をされた方が言われていることが参考になるかもしれません。ですが、死への恐れなどスピリチュアルな問いに対する答えというものは、自分なりの答えを自分で見いだすものなのではないでしょうか?

私は、それを手助けする手段として、「前世療法」を提案しています。一応、「輪廻転生」を前提とした手法ではありますが、「輪廻転生」や「前世」という思想を信じていない方でも使うことができるというところが興味深いところでもあります。前世の物語はイソップ物語やグリム童話のように「昔々、あるところで・・・」という人生訓などを教えてくれる寓話とも受けとれるからです。話が少々それましたが、「死への恐れ」への対処を考えた時、この前世療法では「疑似臨死体験」をすることができるというのが大きなメリットなのではないでしょうか?まだまだこれに関する研究は端緒についたばかりではあるようですが、本物の臨死体験と前世療法での疑似臨死体験では、その心理的効果はそう変わらないと言われています。すなわち、そのような体験をすると「生を大切にする」ようになるということです。

現代人はこれまで、ふだん死から遠ざかってきました。おじいちゃん・おばあちゃんが家で亡くなるということも少なくなり、縁者の方のお葬式にでるだとか、ガンなど死を考えさせられるような病気に罹るだとかしてはじめて、死を意識していたのかもしれません。そこへもって、コロナによって亡くなる方の報道が相次ぎ、いまや、死は身近なものとなりました。「メメントモリ」死を忘れるな、ということは昔から言われています。死を思うことは生を充実させることにつながります。この機会に、さまざまな古人の書かれた本を探求するのもよいかもしれませんし、家族で話し合ってみてもよいかもしれません。死に関しては結局わからないわけですが、その「わからない」ということを家族で共有するのも一つの手でしょう。「リメンバー・ミー」というアニメ映画は子どもさんにも楽しめるし、死後の世界を題材にしているので、このような話をするときの糸口によいのではないかなと思います。あるいは、家族で一緒に夜空の星をみて、そこに故人の姿を思い浮かべてみてもよいのかもしれませんね。

あなたの生きがいは何ですか?すぐに答えられる方はそう多くはないかもしれないですね。コロナの影響で仕事や習い事、いろんなイベントが中断されて、生きがいが失われつつある方もいらっしゃるかもしれません。経済的な問題がでてきた方には生きがいどころではないと言われるかもしれませんが、たとえどんな状況であっても、前回のコラムで綴ったように今の状況を完全に受け入れていれば、新たな打開策を見つけ、そしてまた、新たに生きがいを創造していくことも可能なのではないでしょうか?コロナの感染拡大防止のために移動自粛要請などいろんな制限がかけられたとしても、私たちの創造する能力に制限はないはずです。

「生きがい」とまで大げさにいかなくても、この状況で何ができるかを考えることは大事だと思います。今の事態はどなたにも初めてのことでしょうが、似たような事態、は体験されたことがあるのではないでしょうか?たとえば、被災したことのある方は、その時、どのように過ごされましたか?私自身はこれまで大きな災害は経験したことはないのですが、病気でじっとしているように言われたことはあります。私の経験が皆さまの役に立つかはわかりませんが、ご参考までにその時のことをちょっと振り返ってみようと思います。

高校3年の秋でした。網膜剥離という病気にかかっていることがわかり(放置すると失明します)、レーザー治療にプラスして眼内ガスタンポナーデ治療を受けました。その関係で、常に頭が右斜め上45度の位置を保つ姿勢で安静を保つように、という指示がでました。ベッドの空きがなかったために自宅安静となったのですが、これは高3の私にはなかなかの苦行でした。最初のうちは音楽やラジオを聞いて気を紛らわしたり、次のゴハンは何だろう?と考えたりしながら、母が仕事から帰ってくるのをそわそわと待っていました。よくなったら、あーしよう、こーしようと考える一方で、本当に少しずつではあるのですが、そのうちに諦めの境地というか、開き直りというか、その状態を楽しむ気持ちが芽生えてきました。勉強も何もしなくっていい。目を閉じたまま、障子越しに明るく温かな太陽の日差しをじわ~っと感じ、飼い犬の吠える声や小鳥のさえずる音を聞いて、時おり、頭の位置を変えないように注意しながら体の位置を変えて自分の体の感覚を味わう。最初は1週間と言われ、次にもうあと1~2週間と言われ、最終的に1カ月近くをそうやって過ごしました。

それから、1人目を妊娠した直後、切迫流産となり病院で1カ月、自宅で2カ月ほど安静にしました。この時は目を使うことができたので、DVDでたくさん映画をみました。それから絵画が好きなので、お見舞いに頂いたお花を題材にたくさん絵を描きました。今だったらネット情報を見たり発信したりしていたかもしれないですね。そんな風に過ごしていると時間はあっという間に過ぎていきました。ただ、安静のせいで足腰は萎えてしまい、その後の妊娠期間は、リハビリのためにたくさん歩いたことを憶えています。その時はそれなりにたくさんの大変なこともあったと思うのですが、今、振り返ってみると幸せな充電期間でもありました。そのような時間があったからこそ、その後に普通の生活に戻った時、なんとかやっていけたのだと思います。あの頃は若かった、ということもあったかもしれません。これから大学での生活が待っている、これから赤ちゃんとの生活があると考えることは、生きがいだなんてことを大げさに考えなくってよい時期だったのでしょう。ただ、制限を課されても何かしらやれることを見いだし、それをして気持ちよく過ごすという訓練にはなったと思います。

やれることをやるということから一歩進んで、自分ならではの「生きがい」ということに焦点を当てると、私は、人生の後半への折り返し地点、更年期にさしかかった今こそが、その考え時なのかなと感じます。でも、その一方で、そんなことを考える前に、まずは目の前にあることや、自分に求められていることをやっていけば、自然にそれは見えてくるのではないかとも感じます。確実なのは、今、このコラムを書いていることこそが私にとって生きがいだということです。コラムを書くことで、これまでの自分の体験・人生に意味を与えていると言えます。そして、社会と関わりをもって自分なりに他の人のお役にたてていると感じられるならば、「生きがい」というものは感じやすいのではないでしょうか?

また、「生きがい」というキーワードからは、なかなか子どもが授からなかった時期のことも思い起こされます。よく「子どもの成長が生きがい」という方のお話を伺います。自戒も含めて、自分の夢を子どもに押し付けていないかには注意しないとね、と思いつつ、そういうお話を伺うと、やはり子どもを養育するということは「生きがい」につながりやすいのだと実感します。子どもが欲しくてもできなかったあの頃、私は、子どもが授からない自分に、「生きていていったい何の意味があるのか」と無意識にいつも考えていました。理論的には、心理学者エリック・エリクソンが壮年期の心理課題とした「生殖性」が、実子を産み育てるだけではなくて、次の世代に残すものすべてを指す「次世代育成能力」とも言い換えられるものだということが参考になると思いますが、私自身は、前回の項でも紹介した前世療法を体験した時に、自分の不妊体験や人生の意味について腑に落ちたように感じたのでした。

それから、「生きがい」と言えば、ユダヤ人でナチスの収容所に入った体験をもつ、オーストリアの精神科医ヴィクトール・フランクルが提唱したロゴセラピーに言及しないわけにはいかないでしょう。ただ、私はロゴセラピーについては独学ですのでなんとも言い難く、ご興味のある方には、まずは、フランクルの残した名著「夜と霧」を読むことをお勧めします。収容所で生き残るには想像力やユーモアといった資質が大事だというところが、私には印象的でした。

また、20世紀最高の心理療法家とも言われる米国の精神科医・催眠療法家ミルトン・エリクソンの逸話も連想されます。エリクソンは、あるうつ病の婦人に対して、栽培がなかなか難しいお花を育て、その鉢植えを教会での知り合いの記念日などに贈る、ということを、病気に対する処方として課します。その後、彼女はそれをず~っと実行して再びうつ病に陥ることはなかったということです。今の状況にあてはめると、たとえば、裁縫が趣味の方であれば、布マスクをつくって売るなり贈るなりすれば、社会に貢献し「生きがい」につながり、心身も安定しそうですね。

さらに、新しく生きがいを創造するには「もう私は年を取りすぎている」という方には、グランマ・モーゼスを紹介したいです。グランマ・モーゼスは米国の国民的画家で、古き良きアメリカの牧歌的な田舎の風景画を残しています。今年2020年秋には、生誕160年を記念する展覧会が日本各地で開催される予定のようですが、そのグランマ・モーゼスが本格的に筆をにぎったのは70代半ばを過ぎてからで、80歳で初めての個展を開いたのだそうです。物事を始めるのに遅いということはない、と感じませんか?

この項のタイトルのように、今、おうちでできる生きがいが創造できれば理想的ですが、もしかしたら「生きがい」は一生を通して模索していくものなのかもしれないですね。ですから、「生きがい」とまでいかなくても、「今、おうちで自分なりにできること」からやっていくということもあり、ですよね?「stay home」のこの時期を充電期間ととらえ、あなたの一生の宝となる「生きがい」をあの手、この手で模索してみませんか?

マインドフルネス瞑想については、心理にご興味のある方でなくても、聞いたことがある、という方が多いのではないでしょうか?テレビでも取り上げられるなど、昨今の心理界での流行です。でも、マインドフルネス自体は流行とは程遠いもので、紀元前におこった仏教やヨガなどにその起源があり、今日まで脈々と受け継がれてきたものなのです。現代の日本人は宗教アレルギーというか無宗教の人が多いとは言われますが、それでも、冠婚葬祭でお寺に行くなど仏教は私たちの生活に染み込んでいるところがありますので、日本人にはとても馴染みやすい方法といえるでしょう。ただ、今の流行は、元々日本にあったものが復活したというより、欧米でこの方法が心身の安定に有用だということが評価され、日本に逆輸入されてのことです。日本の禅寺で行われる座禅が厳格なイメージであるのに対して、マインドフルネス瞑想はもっと自由度の高い使われ方をされているように思います。修行僧だけではなく一般人が日常生活の中でゆるゆると実践するイメージです。

欧米でマインドフルネス瞑想を広げた立役者といえば、ベトナム出身の禅僧で詩人としても著名なティクナットハン師や米国マサチューセッツ大学医学部マインドフルネス・センターのカバットジン先生の名前が挙げられるでしょう。私自身がマインドフルネス瞑想を実践するきっかけになったのは、ティクナットハン師の著書に魅せられてのことでした。「怒りを認める」という文言に救われた記憶があります。20代後半の頃でしょうか、その頃、私は結婚して数年経った頃で大学院に行っていましたが、なかなか子どもに恵まれず、いろんなストレスにさいなまされていました。田舎では子どもができないと、いろんなことを言ってくる人がいるものです。それはもしかしたら善意からだったのかもしれませんが、他者からの言葉に傷ついた、暗黒の時代でした。当然、私の中には、そういったことについての怒りなど様々な負の感情があったわけで、それを夫や友人に愚痴っていました。ところが夫は私の暗さを見かねたのか、なんとかしたいということだったのでしょう、その当時流行っていた、「ついてる、ついてる」などポジティブな言葉を使っていると引き寄せの法則でラッキーな自分になれるのだ、というのを家庭で実践することになりました。最初のうちは、私も面白がってやってみたのですが、そのうち、とてもついていけないと感じはじめました。愚痴が言えない、負の感情をないものにする、というのはなかなかにキツイものです。心の奥底に貯めこまれた怒りは爆発寸前というか、ほぼ爆発しかけていたのですが、そこにたまたまティクナットハン師の著書で「怒りを認める」という一節に出会って、とても救われたように感じたというわけです(ちなみに、その本を買ってきたのも夫)。怒りを認め、それからそれに対処するための方策があるわけなのですが、当時の私は、偉いお坊さんも怒りはあってよいと言っていると、ただそこだけにヒットして、瞑想を実践するような境地にまでは至りませんでした。そして、その後さまざまなことがあって数年を経てヒプノセラピーを学ぶようになって、前世療法の世界的権威である米国の精神科医ワイス先生の本を読みふけっていた時に、再び、ティクナットハン師の名前をその本の中に見いだしたのでした。「完全に今という時間、一瞬一瞬を、味わっている。一歩ごとに大地にキスするように歩く」というその文章に、一気にティクナットハン師、そしてマインドフルネス瞑想に対する興味がわいてきました。是非、その歩くお姿を自分の目で見たいものだと思いました。それ以来、ティクナットハン師のリトリートに参加するなどしてマインドフルネス瞑想を自分なりに取り入れてきた感じです。

マインドフルネス瞑想を実践するにあたって、すべてをここに書くことはできません。それだけで1冊の成書ができるようなものだからです。ですので、ここではそのごく基本のみをお伝えしたいと思います。このコラムの「a)-3 呼吸にあわせて体を動かす」ヨガを実践されている方はもう既にできているようなものですが、ティクナットハン師の「ブッダの幸せの瞑想」、カバットジン先生の「マインドフルネスストレス低減法」などの成書を参考にされることをお勧めします。

マインドフルネスとは「今この瞬間をしっかり意識する」ということです。たとえば「お花見に行く」というシチュエーションを例にしてみましょう。お花見に行って、「あ~あ、あの人にあんな事を言っちゃった」とか「あんな事はしなければよかった」などと過去の今さらどうしようもないことを考えだしたりしたことはなかったでしょうか?あるいは「今日の晩御飯は何にしようかな」とか「明日はあの人に会わないといけないけど、こうなってしまったらどうしよう」とか未来のことに心が飛んでしまうことはなかったでしょうか?そうなると、目には確かに薄いピンクの桜の花が映っているかもしれないけれど、その美しさを全く味わえていないということになります。過去をくよくよ反省しすぎたり、未来を心配しすぎると心は不安定になります。それではどうしたらよいのか、今、この時に錨をおろせばよい、ということになります。

今、この瞬間を味わうことができるようになると、心に余裕が生まれます。周りの人に心ない言葉を言われたとしても、その言葉を聞いて自分の中に生まれてくる怒りなどの感情に気づけるようになります。自分が怒りの真っただ中にあることと、自分の中に怒りがでてきたなと気づいていることには、大きな違いがあります。怒りの真っただ中にあれば、そのまま相手に怒りを返してしまいがちでしょう。すると相手がまた怒って返す・・・。でも、自分の中に怒りがでてきたと客観的に外から自分を眺めるような余裕があると、ちょっとその場を離れて歩く瞑想をすることだってできます。そして深く相手のことを見つめると、どのような背景がその人にそのような態度をとらせているのかが理解できます。理解すると、その頃には怒りの感情は消失してしまっていることがほとんどでしょう。その人を許すことができますし、穏やかにその人に注意を促すこともできます。

今、この瞬間を味わうようには、どのようにしたらなれるのでしょうか?今、この瞬間に誰でもが行っていることは「呼吸」です。ですから、マインドフルネスではまずは「呼吸」を意識します。息を吸うとき、自分が息を吸っているということに気づきながら吸って、息を吐く時、自分が息を吐いているのだということに気づきながら吐きます。呼吸を最初から最後までたどる、ただ、それだけです。呼吸法については、ご自身がラクにできるやり方で構わないのですが、一応、このコラムの「a)-3 呼吸にあわせて体を動かす」の項を見直しておいてください。鼻呼吸については、舌を上顎、上のほうの歯のすぐ後ろに押しあてるようにすると行いやすいと思います。また、最初にトレーニングを始めるにあたっては、環境や姿勢を整えてから行ったほうがやりやすいでしょう。いつものリビングや寝室で構いません。カーテンをひいてやや薄暗くするだとか、自分の好みの敷物をひいたりして、そうすると自分がゆっくり瞑想する場になると決めてしまいましょう。椅子に座ってでも、床に胡坐をかいて座ってでもOKです。結跏趺坐などの姿勢がとれるにこしたことはありませんが、とにかく前後左右均等に安定した姿勢であればよいわけです。椅子の場合は足裏がぴったり床を感じるように、座席の前のほうに座ります。床の場合はお尻の下だけに座布団を敷くとお尻が高く両膝が下におりて安定させやすいです。腰を立て、首の後ろを長くして、頭はフックで天から吊り下げられているような感じ、みぞおちの部分をやや緩めて、背骨が本来のS字カーブを描いて天のほうにむかってすう~っと気持ちよく伸びていくような感じです。目は閉じても薄目をあけていてもOKです。閉じている場合は第三の目といわれる額の中央をみるようにするとやりやすいように思います。肩の力を抜いて、口元に微笑みを浮かべながら、ご自分なりにやりやすいやり方を試行錯誤するようなつもりで、楽しんで呼吸に意識を向けましょう。

瞑想中、いろんな雑念がわいてきても、雑念がわいてきたということに気づけたというわけですから、そっと手放して呼吸に戻ります。あまりにも頻繁に雑念がわいてくるという場合は、呼吸を数えるとやりやすいでしょう。私は息を吐く時に「ひと~つ」と数え、また息を吸って吐く時に「ふた~つ」と数えます。そうやって、10あるいは20、100まで数えたら、また1に戻ります。途中で数字を忘れた時も1に戻ります。この方法はとてもやりやすいですよ。

それから、雑念というよりも、トラウマなどのように心の奥底にしまっていたものがどうしても浮かび上がってくるという場合もあるでしょう。そのような場合には、私はヒプノセラピーの退行療法が適していると考えます。マインドフルネスは自分の頭の中の勝手なおしゃべりをストップさせてくれる有用なツールですが、退行療法でそのおしゃべりの内容を変えるというか整理整頓しておくと、非常に瞑想がやりやすくなります。また、「ついてる」などのポジティブな言葉をやすやすと使えるようになります。

それから、時間をしっかり取って座る瞑想や横たわる瞑想をするほかに、日常生活全般の中で瞑想していくのも、なかなかに心地よいものです。歩く時も、食べる時も常に完全にその場に、その瞬間にいるようにします。座ってなんかいられない、コロナの影響で外食ができず家で毎食つくるのが大変なんていう、家事に忙しい主婦であっても可能です。ついついおろそかに考えられがちな家事ですが、お寺のお坊さんたちは作務を大事にされますよね。洗濯物を干す時にも、皿洗いをする時にも、瞑想は可能です。かえって、何か単純作業をしている時のほうが瞑想しやすいという方は多いものです。

私は、朝起きて、まだ家族のだれも起きていないような時間帯に、玄関からでて数メートル離れたところにあるポストまで歩きながら瞑想をして新聞を取りにいくのがお気に入りです。早朝の新鮮な空気、新鮮なエネルギーを得て、1日の最高のスタートがきれます。そして、朝食後に洗濯物を干す時、呼吸を整え、ゆっくりと時間をかけてその洗濯物の白さを、清潔な匂いを楽しみながら、今、自分に家族がいるのだという幸せを感じつつ干すのも、大好きな日課の一つです(お一人暮らしの方もいらっしゃるでしょう。でも、私たちは誰しも、本当の意味では一人ということはありえないのです。ここでは割愛させていただきますが、ティクナットハン師のinterbeing「相互存在」という概念は非常に重要だと思いますので、是非、ティクナットハン師の著書を手にとられてみてください)。以前の私はせっかちで、車に乗っていて赤信号で止まらざるをえない時は、イライラと先を急いだものでした。でも、今は、赤信号は私をゆっくりさせてくれる強力な助っ人です。呼吸に戻って自分を取り戻すことができます。

欧米のIT企業のトップも昼休みに瞑想をされたりしてマインドフルネスを積極的に取り入れているようですよ。私はマインドフルネス講座をこれまでに何度か開催してきて、ほんの3時間程度なのに多くの方が変化されていくのを見てきました。もちろん、この講座がすべての方にヒットするわけでもなく、本来はリトリートに行くなどして何度も実践を重ねることによって心の安定はもたらされていくのでしょうが、まずはこの機会に、マインドフルネスの成書を購入されて、おうちで実践することから始めてみませんか?

前項で書いたマインドフルネスの基本は呼吸でした。そして、リラクセーションの基本もまた、呼吸です。ですので、このコラムの「a)-3 呼吸にあわせて体を動かす」と「a)-6リラックスする時間をキープする」も見直してから、この項をお読みください。

あなたはふだん、リラックスしているほうですか?それとも、緊張しやすいですか?まずはちょっと肩をリラックスさせてみましょう。「肩の力をだら~んと緩めてリラックスします。息を吐くごとに力が抜けて、じんわりと緩んでいきました」と言われた時のあなたの肩の緩み具合はいかがでしょうか?それとも「息を吸ってぎゅ~っと肩に力を入れて、耳につくくらいまで持ち上げて、そして、息をは~っと吐いてだら~んと緩めて」のほうが緩まるでしょうか?別に正解はありません。お一人お一人で違うでしょうから、自分がリラックスしやすい方でやっていけばよいのです。リラックスすることで得ることのできるメリットはもうわかっていますよね?体がリラックスすると心もリラックスして余裕ができますし、体調自体もよくなっていくはずです。免疫力もあがっていくことでしょう。コロナに打ち克つ、しなやかな心身を作り上げていきましょう。

一度、力を入れてから抜いたほうがリラックスできるというあなたはこちらです。米国の医師Jacobson先生が開発された漸進性筋弛緩法を身につけましょう。私はできるだけイメージも使って応用して行っています。マインドフルネス瞑想と同じように、どこか場所を決めてトレーニングするとよいでしょう。その場所に座るか横たわって始めていきます。まずは呼吸です。ふ~っと吐く息を意識して、何度かお腹で呼吸していきましょう。自分がラクにできるペースで大丈夫です。次に、呼吸にあわせながら、体の各部位を足の先から頭のほうへ向けて順番に、緊張させては弛緩する、を繰り返していきます。一つの部位について、だいたい3回ずつ行っていくとよいでしょう。まずは足の裏の筋肉から始めましょう。両足の裏にゴルフボールが1個ずつあるようなつもりで、息を吸って足の裏の筋肉にぎゅっと力を入れてそのゴルフボールをしっかりつかみます。少し息をキープしたら、息を吐いてそのゴルフボールを放します、あと2回します。同じように呼吸にあわせて、筋肉を緊張させた後に弛緩する。3回終わってゴルフボールがなくなると、じわ~っと足の裏の筋肉が緩むのが感じられるでしょう。その緩んだ感覚、それをじっくり味わってください。味わい終わったら、次は両脚全体を行っていきます。両脚を少し持ち上げるようにすると力が入りやすいでしょう。息を吸って両脚に力を入れたら、そのまま息を少しキープして、それから息を吐いて両脚を下に降ろします。すると、両脚はだら~んとリラックスしていくでしょう。その感覚をしばらく味わって、そして、次にお尻の筋肉にいきます。息を吸ってお尻にぎゅっと力を入れて肛門をきゅ~っとしめて、ちょっとだけ息をキープしたら、息を吐いてじわ~っとお尻を緩めていきます。お尻のじわ~っと緩んだ感覚を楽しんだら、次はお腹の前のほうの筋肉、そして肩、両腕、顔という具合に一か所につき3回ずつ行っていきます。両腕を行う時は、親指を中にしてこぶしを握って、そして馬の手綱を引き締める時のようにこぶしを上に持ち上げるとよいでしょう。息を吐いて、こぶしを下に降ろして緩めると、両腕全体がだら~んと緩んでいくのがわかるでしょう。顔をやるときは、口の中にレモンをイメージして、その酸っぱさに口がとがって、目もくしゃくしゃっとなって顔のパーツが真ん中に集まってくるような、そんな感じです。そして、息を吐いて、顔全体が弛緩していくのを感じます。その他、ご自身が力入っているな、緩めたいなと感じる部分があれば、そこに向けて呼吸しましょう。息を吸ってその部分にぎゅっと力をいれて、息を吐いてそこを緩めます。

そして、ただただ緩むイメージのほうがやりやすいという方には、頭のほうから足のほうに向かって順番に1か所ずつ段階的に緩んでいくのをイメージする方法や癒しの光をイメージするリラクセーションなどがお勧めです。これはワイス先生の本などにその方法が掲載されています(「前世療法2」PHP文庫1997年)。是非、本をお手にとって実践されてみてください。江戸時代の名僧、白隠禅師が「夜船閑話」という本に残した「軟酥の法」も知る人ぞ知る素晴らしい方法です。癒しを手伝ってくれる頭の上にのるものが、「光」から「軟酥」に変わってはいますが、両者はとても似通っていて私にはとても興味深いです。軟酥とは、バターやチーズのようなもので、当時としては貴重な乳製品と思われます。今でいうと、高級エステのオイル・クリームのようなものでしょうか?ただただ緩ませるという方法の1例として、リラックスして温泉に入っている自分をイメージしていただくという方法をご紹介します。

いつもの場所にゆったり座るか横になってはじめていきましょう。まずは呼吸でしたね?ご自身がラクにできるペースで大丈夫です。は~っと息を吐いていきましょう。すると、息を吐くごとに心も体もぐんぐん、ぐんぐんリラックスしていきます。そのまま目を閉じると、閉じたまぶたがじわ~っと緩んでいきました。そして、その緩んだ感じは、あなたが一息、息を吐くごとに、さざ波が広がるようにさ~っと体全部に広がっていきます。まぶたから頭全体へ。そして、さらに下のほうへと降りていって、首、胸、肩も深くリラックスしていきました。それから、両腕もだら~んと緩んで、両腕が緩むと、それがついている肩のあたりもさらに深くリラックスして、リラクセーションの波は、胸からお腹、そして背中からお尻、両脚へと広がっていきます・・・さ~っと体全部が緩んでいきました。体がリラックスすると、心もリラックスして、いろんなイメージがしやすくなっています。今から、癒しの温泉の湯でリラックスするイメージの中に入っていきましょう。山奥の静かな温泉宿に行ったつもりになってください。123の合図で、あなたは一人ゆったりと戸外の露天風呂に浸かっている、そんなあなたになります。123ほら、あなたは今、一人ゆったりと戸外の露天風呂に浸かっています。ここのお湯はちょうどよい温かさで、あなたの体を包み込んでいきます。肌にやさしいその湯を、たちのぼってくる湯気を味わってください。この露天風呂には源泉から湯が注がれてきていて、その湯が風呂に流れ込む音、そして、湯があふれて外に流れ出ていく音がする。小鳥のさえずる声もしているかもしれない。この温泉に心地よい日陰を与えてくれる新緑の葉はやさしい風にそよぎ、木洩れ日の光はキラキラと心地よい。ここにあるすべてが、あなたをじわ~っと癒していきます。涼しい風が額を通り過ぎていきます。温泉の中で一息、息をふ~っと吐いてください。すると、あなたの体と心はさらにさらにリラックスしていきます。そう、今、あなたは深く、深くリラックスしています。この温泉に浸かっている、このリラックスした安心・安全な感覚を、時間を十分にとって、じっくりと味わって・・・そして、もう十分だと感じたら、温泉からあがって、元の場所へ戻りましょう。あなたがリラックスのトレーニングをしていたあの場所に戻りますよ。号令のように勢いよく数を数えて戻っていくとよいですね。123はい、お帰りなさい。手足を動かしたり、背伸びをしたり、気持ちのよい運動をして、こちらの世界にしっかりと戻りましょう。リラクセーションを味わった後には、体も頭もスッキリして、気持ちよく活動を始められます。いつもよりも効率よく働く自分に気づかれるかもしれません。眠る前にお布団の中で横になってこのリラクセーショントレーニングをして、リラックスしたそのまんまで眠っていってもよいでしょう。そうすると、すぐに、ぐっすりと気持ちよく眠って、次の日の朝には、起きるべき時間に、心も体も爽やかに目覚めていきます。

欧米で、よりたくさんの方がコロナのために亡くなられています。心よりご冥福をお祈り申し上げるところですが、彼らの死は私たち残された者に重要なメッセージを送ってくれているのだとも思います。高齢で心血管系などの基礎疾患をもっている方に危険性が高いということでした。肥満解消、脱メタボが勧められるということです。ただ、欧米の方と日本人では肥満のレベルが違う場合が多いですし、コロナは別としてもちょっとくらいふっくらしていたほうが実は寿命は長いのだという報告があるので、日本人ではどの程度の方が本当にダイエットすべきなのかという点は疑問ですが、この機会に、必要な方には是非励んで頂きたいと思います。

私は漢方外来では、その方の骨格に体重がみあっているかどうか、腰骨からおヘソまで撫でた時にす~っとフラットにいく、というのを目安にしています。漢方薬にも代謝を助けるものはありますが、基本的には食べる量を減らすか、運動量を増やすことが必要でしょう。地道に続ける気持ちが必要です。自分は、この方法だったらやれる、続けられると感じる方法を「やる」と、自分で決めて、誰かに、コーチというか見守ってもらうと続けやすいのではないでしょうか?また、ダイエットについては、これまで、いろんな方法が提唱されては消えていったという事実があります。つい最近では糖質制限が流行っておりました。あるいは、何かの食品だけを食べて痩せるという方法がよくありますが、私は危険な方法だと考えています。

私は、食事療法の基本は、ある程度バランスよく、季節にあった旬の食べ物、地産地消ということでお住まいの地域で採れるものを中心に食べるということだと考えています。糖質制限は短期間には有用かもしれませんし、極端にやるのではなくて夕食だけ炭水化物を減らすなどの方法であればよいかもしれませんが、本当に私たちの体にあっているのでしょうか?その動物に見合った食べ物は、歯をみるとわかる、とも申します。人間の歯は、切歯(前歯)8本、犬歯4本、臼歯16~20本です。この割合から考えると、臼歯ですりつぶして食べる穀物が主食であって然りでしょう。それに、地取れの季節の野菜を添え、時にごちそうとして肉や魚を食べるという食スタイルが私たちの体には合っているのではないでしょうか?食養生については、次の項でも引き続きお話したいと思いますが、現代の日本人の食は、以前よりも肉が多くなって毎日がお祭り騒ぎとも言えるでしょう。美味しいご馳走は体にとってだけではなく心にとっても栄養となりえますので、時には必要なことなのでしょうが、それが毎日続くとなると問題だと言わざるをえません。

また、コロナについては、肥満やメタボの問題の他に、ステロイドホルモンの内服薬を使わざるをえない病気をお持ちの方やがんにり患されている方などが重症化しやすいと言われています。これまでもおそらく、ご自身の病気をよくしようと努めてこられたことでしょうから、今さら私がどうのこうのいう問題ではないでしょうが、感染リスクを減らす行動とともに、やはり少しでも免疫力を高めるような自助努力をされるとよいのではないかと考えます。たとえば、このコラムの冒頭で書いた「笑う」などは使えると思います。

さらに、コロナ対策として大事なものに、冷え症の克服もあげられるでしょう。冷えが強いと、免疫力がうまく働かないと言われます。高齢の方はじっと家にこもっていらっしゃる場合が多く代謝も活発ではないでしょうから、もしかしたら、かなり冷えていらっしゃるかもしれません。それから、ただ単に冷えるのではなくて、足は冷えるのに上半身はのぼせるという「冷えのぼせ」「上熱下寒」に陥っている方もいらっしゃるでしょう。これには自律神経の失調が関わっているので、前の項でお伝えしたリラクセーションテクニックなどが本当に役に立ちます。白隠禅師は禅の修行のやりすぎで「禅病」に罹ったと言われています。それこそが「上熱下寒」の状態で、それを軟酥の法でもって克服されたのだそうです。

この項の後半では冷え症について詳しくお話したいと思います。私は幼少時から胃腸があまり丈夫なほうではなかったので、食べても太らず、50歳になった今でもおかげさまでメタボとはほぼ無縁なのですが、幼少期から既に寒がりやさんで、冷え症にはず~っと悩まされてきました。若かった頃なんて特に、しょっちゅう風邪をひいていました。免疫力は相当に落ちていたのでしょう、風邪以外の感染症にかかることもありました。20代後半から、免疫力アップ、冷え症を克服するべく、いろんな養生法を今まで試してきました。その一番手は漢方です。

体温が1度あがると免疫力は何倍にもなると言われています。これを実感したのは漢方を使い始めてからでした。それまで風邪をひいて通常の西洋医学の病院に行って薬をもらってもいっこうによくなりませんでした。私の風邪は、たいして熱はあがらない一方で、いつまでも咳が治らなかったり倦怠感がひどかったり、ぐずぐずと治りが悪かったのです。それが、内科の先生でもあった漢方専門医に診てもらうと、治り具合がそれまでと全然違いました。適切な漢方を飲んで寝ると、次の日の朝には復活していることが多くなったのです。風邪の初期、西洋医学では一般に解熱剤や総合感冒薬を処方し体温を下げて体がラクな状態をつくります。一方で、東洋医学では体を温める薬方を用います。寒気がして汗がまだでていない場合、体温を上げ免疫力アップしてウィルスを撃退するように、発汗して解熱するようにという狙いです。普段から暑がり屋さんで元気が余っているような方だと、風邪のウィルスが体内に入ると高熱がでるなど大きな反応がでますから、西洋医学的な方法も心地よく感じるのではないかと思います。ですが、私の場合、普段から冷えていたので、西洋医学的な方法ではさらに冷えが助長され風邪が治りづらかったわけです。また、冷え症に対する漢方薬を長期に飲んでいくと、風邪にかかること自体が減っていきました。

漢方薬以外で、自分で体を温める方法についても言及したいと思います。物理的に温める方法として、まずは服装を見直すべきでしょう。おへそや脚を剥き出しにした服装は考え直したほうがよいと思います。逆に、腰から下を温める服装、レッグウォーマーや腹巻はお勧めです。それから、基本的に「頭寒足熱」ということで上半身は薄着のほうが健康的ではありますが、それも程度問題で、冷え症がひどい方は、特に頸まわりは温かくしておく必要があります。「首、手首、足首」名前に「首」がつく部分は太い血管が体の表面に近いところを走っています。そのため、「首」は保護しておかないと体温が奪われやすいのです。脚にはレッグウォーマー(真冬にはゴルフショップのものがお勧め)、手首にはスポーツ用のバンドやアームカバー(日焼け対策のものを転用できます)、首にはスカーフやマフラーが、状況にあわせて調節できて便利です。また、締め付けの強い下着はNGです。日本製のものは驚くほど小さめに作ってあったりするので、場合によっては妊婦さん用にゆるゆるに作ってある下着を購入するのも一手です。素材も、着てみて肌触りのよい天然素材、綿がよいのではないでしょうか?そして、特に汗をかきやすい方は、汗がひいて冷える場合が多いので、吸湿性のあるシルクの5本指の靴下のうえに温かい靴下をかさね履きすると快適に過ごせると思います。

冬場の暖房器具も一工夫が必要です。特に、冷えのぼせのタイプの方は、エアコンによる暖房ですと温かい空気は上にいってしまうので、頭がぼ~っとするばかりで肝心の足元はなかなか温まらないということになってしまいます。昔ながらのストーブや、床暖房などがベストです。ストーブやファンヒーターがあると、風邪をひき始めたかな~とちょっと寒気を感じた時には、その前に背中を向けて座ると、寒気がなくなって風邪が退散することがあります(やけどにご注意!)。インフルエンザや今回のようなコロナでは?足りないかもしれませんが、私の場合、普通の軽めの風邪にはかなり有効です、是非お試しあれ。話が逸れてしまいました。物理的に体を温める方法について、このコラムで既に書いてきたことですが、お風呂に入ることももちろん有効です。体を温める食養生については次の項目でお話したいと思います。

さらに、冷え症を根本的に治したいのであれば、筋肉をつける必要があります。私たちの体は筋肉で熱産生しているので、筋肉がないと自前で温まることはできません。筋肉の多くは下半身にありますので、歩くなどして足腰を鍛えると効果的でしょうし、なかなか散歩は出来ないという方はおうちでスクワットをされるとよいでしょう。また、腕まわしも積極的にしてみるとよいと私は思います。褐色脂肪細胞が肩甲骨や首の周りに多くあるからでしょうか?それとも信じる力、暗示の効果でしょうか?経験的に、寒さを感じる時、肩甲骨のあたりを使うような運動をすると、他の部分を動かした時よりも、ポカポカ温まる感じがより強いように感じます。次回は、免疫力アップの食養生について、です。お楽しみに。

今さらながら免疫力がクローズアップされています。薬やワクチンが開発されてもされなくても、最後に自分を守る鍵になるのは、元々、自分の体に宿っている免疫力なのです。コロナ対策の食養生としては、発酵食の有用性がよく取り沙汰されていますが、そのほかに、前回お伝えしたように、冷えで免疫力は左右されるので、体を温める食養生も有用でしょう。体質によっては、また真夏など体を冷やす必要がある場合もあるでしょうが、日本人の多くは冷えていると言います。

コロナの問題がでてきてから、納豆など発酵食の売れ行きがよいようです。スーパーによっては納豆は1家族1個までという販売制限をしているところもあります。発酵食は腸内の善玉菌を増やし、腸内細菌のバランスを整える働きがあるとのことです。腸内には免疫に関わる細胞が多く存在し、その働きには腸内細菌が関わっているため、コロナ対策として免疫力を上げたいのであれば、発酵食を利用しない手はないでしょう。

昔から日本人は高温多湿の環境の中で、納豆や漬物、味噌、醤油、甘酒といった発酵食品を多く利用してきました。食中毒を防ぐ以外に、栄養価が高くなる、消化吸収されやすいという利点もあります。私の家族には食物アレルギーがありましたが、アナフィラキシーをおこすことはなかったので、少しずつそのアレルゲンの食べ物をあえて食べさせて、慣らしていくということをしました。その際、加熱したり発酵させたものがアレルギーをひきおこしにくいということで、発酵食はかなり利用しましたが、食物アレルギーが治った今でも発酵食は我が家の定番です。

それには、発酵食が美味しい、ということも大きなポイントでしょう。魚や肉も塩麹や味噌に漬け込んでから焼くと、旨味が凝縮されるように感じます。旨味調味料など使わなくても、塩麹や味噌、本物の醤油を使えば、美味しく頂けるものです。食養生のコツの一つは、美味しく実行する、ということだと思います。美味しくないと、なかなか続かないのではないでしょうか?

ここで一つ注意したいのは、発酵食品もどきの製品もあるということです。たとえば、醤油は本来、大豆・小麦・塩で作られているはずですが、もどき商品ではその他のさまざまな添加物が入っています。ラベルを見ればわかります。昔からの製法で作られた本物の調味料は、確かに値段は張りますが、添加物を体内に入れずにすみますし、料理もおいしくできて、それに見合う価値があります。なお、調味料つながりで塩についてですが、塩も様々な製法で作られたバリエーションがありますのでご注意ください。私は精製塩ではなくて伝統的な製法のものがお勧めです。美味しいですよ。

また、乳酸菌といえばヨーグルトという方が多いのですが、カロリーがそれなりにありますし、乳酸菌は食物繊維と一緒に食べるほうがよりよいとされますし、なにより乳糖不耐症などの関係で多くの日本人の体には乳製品は合わないのではないかと考えられるので、昔ながらに野菜のぬか漬けなどの漬物で取り入れるほうがよいのではないかと考えます。

冷え症解消の食養生としては、体を温める食べ物、冷やす食べ物の別について、一応知っておく必要があります。ただし個別にいちいち覚えなくても、判断の目安となるものがあります。その食物の産地がどこなのか、旬はいつなのかということです。基本的に、バナナなど気候が暑い地方でできるものは体を冷やします。夏が旬であるきゅうりやメロンなどウリ類、トマトやナス、ジャガイモなどのナス科の野菜、葉野菜、それから大豆は体を冷やす方向です。一方、寒い地方でできるものは体を温めます。冬が旬である大根や人参などの根菜類やネギやニラなどは体を温めます。鶏肉もそうです。ですから、冷えの程度にもよるとは思いますが、大体の方はいちいち覚えなくても、とりあえず、ご自身のお住まいの地域で採れた露地栽培の安い野菜をメインに食べていればOKということになります。また、温めるものと冷やすもので中間を目指すよりは、元々中間に近い穀類を基本的な食べ物に据えることも食養生のコツだと考えます。

また、調理法も大事です。先に書いたように、「発酵」という調理法は優れていますが、そのほかに「加熱」や「干す」ということも、冷え症解消にはお勧めです。冷え症のひどい方は、刺身のように加熱されていない生もの、水分の多い生野菜にも用心されてください。煮物など加熱された料理がお勧めです。また、「干す」という過程を経ることで陽性の食べ物になるものも多いです。キノコは陰性ですが、干しキノコは陽性とされます。ショウガも、蒸して熱を加えて干したものは、漢方では「乾姜」といい、体を温めてくれる非常に重要な生薬です。干した野菜は保存にも適しているので、今のように頻繁な買い物はどうかな、と思うような時には重宝ですね。

それと、毎日のように市販のスイーツを食べるのも問題と言わざるをえません。市販のスイーツのほとんどは、精製した白砂糖を用いているからです。この白砂糖の体を冷やす力は相当なものです。なので、極力、甘酒や黒砂糖などの甘味料を用いているスイーツをお探しください。時間のある方であれば、この機会に自分で手作りしてみてもよいかもしれないですね。ただ、食べたいものを我慢するのはなかなか長続きしませんので、どうしても白砂糖系が食べたいという方は、食直後に、体を温めてくれる紅茶や3年番茶とともに食べるとよいのではないかと思います。ちなみに、紅茶はカフェインが入っていて脳を興奮させ眠りを妨げるリスクがありますが、3年番茶はカフェインフリーですので夕食時にはこちらのほうがお勧めです。また、緑茶やコーヒーにもカフェインは含まれており、かつ、ホットであっても最終的に体を冷やすようです。

食養生がちゃんとできているかについては、冷え症が改善したとか肥満が解消されたとか、きっかけとなった症状がよくなっていればもちろんOKと判断できますし、あともう一つは、便通が目安になります。腸内環境を整えるためにも、便通は大事です。発酵食や温める食事の他に、便通のよくない場合は水分や油分、食物繊維が問題である場合もあるでしょうから個々人で試行錯誤してみてください。プルーンで調子よくなる方は多いです。もちろん、漢方薬も有用です。ただし、器質的な病気による通過障害やストレスが関係している場合もありますので、あまりにひどい時は病院で調べてもらったほうがよいでしょう。ちなみに、ストレスで便通異常や腹痛をきたす過敏性腸症候群はヒプノセラピーのよい適応であることは、一般にはあまり知られていませんがちゃんとしたエビデンスがあります。

さらに、もう一つ。コロナ対策として、発酵食・体を温める食事の他に「気を巡らす」ということも提案したいと思います。今のようにおうちにいることを求められてストレスを感じる方は、ゆずなどの柑橘類やミント・セロリ・春菊・紫蘇のような香りの高いもの・ハーブを取り入れてみてはいかがでしょうか?ジャスミンティー・カモミールティー・ミントティーなどでゆっくりお茶したいですね。私は赤紫蘇ジュースが大好きです。ミントや柑橘類をつけ置きした水も簡単にできますし、目にも美しいですね。

ところで、私は20代後半~30代前半に食養生にはまった時期があります。低アレルギー食のほかに、玄米菜食、マクロビやベジタリアンなども経験しましたが、玄米菜食、マクロビは私には合わなかったようでした。胃が痛んだりもたれたり、玄米が胃に負担だったのです。メタボなどの観点からは健康によいというイメージのある玄米ですが、実は、1) 炊いた後に発酵させる、2) 炒ってから炊く、3) 炊いたものをお粥にしたてなおす、などの工夫をしないと、胃腸が弱い方にはかえって健康を害する結果となることが多いのです。その点、雑穀は便利で、消化には問題ないようなので、私は今は、基本的には雑穀を混ぜた白米(できれば5分~7分搗きが望ましい)、そして、時々発酵玄米を食べています。

それと、前回も書きましたが、現代の日本人の食は「毎日がお祭り騒ぎ」という場合が多いように思います。ひと昔前には肉などは特別な「ハレの日」に食するものでした。「いつもの日」には昔ながらにご飯、みそ汁、漬物というのが基本だったのです。ですが、世界中の美味しい料理を知ってしまった私たちとしては、そこまできっちりとしなくても、1週間の中でバランスをとるつもりで、昨日はパーティー料理だったから今日は粗食にするだとか、基本、平日は粗食にして週末はご馳走料理にするだとか、ご自身の体の調子もみながら調整すればよいのではないかと思います。

最後に、一番重要なことをお伝えしたいと思います。食養生はストレスにならない程度に、ゆるゆるで行う、ということが大きなポイントだということです。私に玄米菜食やマクロビが合わなかった、もう一つの理由がこれです。今でこそ、玄米菜食やマクロビのお店はいっぱいありますが、私がそれをやっていた頃は珍しかったのです。その頃はまたストイックにやっていたので、友人と食事に行くのが大変でした。妥協して普通のお店に行っても、これは食べてはいけない、などと心の中で考えていると、当然ながら、食事はちっとも美味しくないのです。その時は結局、玄米が胃に負担で止めたのですが、あまりに厳格に食養生をするとストレスになる、かえって健康を害することもあるということはしみじみ実感したのでした。もちろん、菜食自体は心身の健康によいですし、地球環境にもよいし、しかも美味しいので、今でもできるだけ野菜いっぱいの食事を心がけているのですが、でも、友人との美味しい食事は、食事の内容が何であっても楽しむようにしています。それは心の栄養にもなるのです。ある程度時間をかけてゆっくりと、よく噛んで、腹八分目で、楽しい気持ちで、食事に感謝して、一緒に食卓についている人に感謝して食べることが最大の食養生といえるでしょう。

このタイトルをみて、「あ、うちは家族で何かするなんてありえない!」と思った方にこそ、読んでほしい項です。一般に、人間関係は家族など親しい間柄にあるほど難しいものです。ストレスマネージメントの基本はストレスになるものから距離をおく、ということですが、家族の場合はそれができない、距離をおくことが難しい場合が多いでしょう。ステイホームの今、特にそれが困難を引き起こしているのは想像に難くないわけで、虐待やドメスティックバイオレンスDVなどの問題の悪化が危惧されています。

そして、もう一つのストレスマネージメントの基本は「サポートを得る」ということで、保健所や社会福祉の専門家、心理カウンセラー・心理療法家・医師などからのサポート以外に、友人や家族などからのサポートが期待されます。専門家だと家庭の中に入り込むのは難しい場合もあるでしょうから、もし、家族からサポートが得られるのであれば、それにこしたことはありませんよね。でも、家族がお互いを支え、支えあう機能がうまくいっていない場合、個人はかなりの困難を背負うことになってしまいます。

ただ、もしかしたら、相手が家族だと「きっとこのようにしてくれるはず」という期待があって、その期待が裏切られるから、その相手のことを許しがたく思って、支えあうことができないのかもしれません。同じようなことをされても、それが他人だと、元々そこまで期待していないのでやり過ごせるのかもしれません。ですから、今のような状況では、家族関係を癒すことが、いつもに増して重要だと思います。

あらゆる人間関係と同じように、家族関係の問題はヒプノセラピー退行療法のよい適応です。幼少時に問題がある可能性の高いシチュエーションであれば、その記憶を年齢退行療法で見直していってもよいかもしれませんし、幼少時の記憶に戻るのが辛すぎる場合などには前世に場を借りた寓話療法を行ってもよいかもしれません。その人との間に起こった出来事自体は変えられないかもしれませんが、その出来事を自分がどのように認識するかの認知が変わって心がラクになる場合もあるでしょう。

ヒプノセラピーの経験からわかるのは、虐待や暴力行為自体を許容するわけでは決してないのですが、虐待や暴力をふるう側も困難を抱えている場合がほとんどだということです。虐待をする親自体も、そのまた親に虐待を受けていた場合などがその典型的な例でしょう。親にされたのと同じようなことをしてしまうと悩んでセッションを受けにいらっしゃる親御さんもいます。どこかでこの世代連鎖を断ち切る必要があるのです。もしあなたがそれをするならば、それは本当に称賛されるべき勇気ある行為です。そして、その勇気には、それに見合う恩恵がついてくるものです。あなた自身だけではなくて、あなたの子孫によい影響がでるでしょうし、また、祖先をも癒すことになるでしょう。

退行療法を受けて頂くにこしたことはないと思いますが、様々な理由で受けられない場合もあるでしょう。その場合は、下記のようなワークをしてみてはいかがでしょうか?その許しがたい人はあなたから見て、どのような立場にある人ですか?お父さん、お母さんでしょうか?それとも兄弟でしょうか?いったん、その人をその立場から外して、別の立場に置き換えてイメージしてみてください。もしもあのお父さん、○○君があなたの弟や子どもだったらいかがですか?家族の中で威張り散らすあの人が弟だったとしたら、子どもだったとしたら、あなたはその○○君にどんな感情を抱き、どんな言葉をかけますか?現在の立場から離れた、その人自体を見つめてください。あるいは、○○君が同級生だったら、どうでしょうか?平等な人間同士としてその人のことを深く見つめると、どういうことがあってお父さんがそのような態度をとるのか、より理解しやすくなると思います。そして、真に理解すれば、その人を許すこともできるでしょう。

それともう一つ、このワークをする際には、あなた自身を癒しておくと、よりよいのではないかと考えます。あなたのお父さん○○君は残念ながらそのような人物だったのです、その人間臭さに、かえってそのお父さんに対する何とも表現しがたい種類の愛や縁を感じる場合もあるでしょうが、でも、あなたには本当の意味でのお父さんが必要なのではないでしょうか?あなたに社会での生き方を教え導き、深い愛情で育くんで社会から守る父性をもったお父さんが必要なのではないでしょうか?もしそうなのであれば、その精神的な意味でのお父さんをもつことです。それはもしかしたら、今生ではお祖父さんなどとして実在した人かもしれないし、本の中で遭遇した偉人かもしれません。まったくあなたがオリジナルにイメージした人物であっても構わない、とにかく、その理想のお父さんとイメージの中で語り合ったりしてご自身を癒してください。すると、上記の「平等な人同士として深くみつめるワーク」も、よりやりやすくなると思います。しっかりと理想のお父さんを感じたい場合は、このコラムの「b)-4リラクセーション技法を身につける」の最後に紹介した温泉の中で、そのお父さんと語り合うイメージをしてみてもいいかもしれないですね。

「許す」という行為は相手のためだけに行うのではないとも思います。許せない場合、その感情は多くの場合、そう思う本人自体を傷つけているように見えます。マインドフルネスの「慈悲の瞑想」もよいかもしれません。これは最初、慈しみを向ける対象として、自分自身から始めるというのもポイントですが、最終的に、許せないと感じる相手にも慈しみを向けるという瞑想です(詳細はこのコラムの「b-3マインドフルネス瞑想」の中で紹介した成書でご確認ください)。「慈悲の瞑想」は時間をとって繰り返し行う必要があります。その許せない相手に対して怒りや恐れなど様々な感情をお持ちでしょうから、取り掛かるのもなかなかに難しいかもしれませんが、やりがいはあります。許すと自分自身がとてもラクになれるのです。やりきってしまえば、もう、その人とのことで思い煩うことはありません。あなたはまた一つ、自由になったのです。

そして、うちはそこまでではない、まあなんとか家族やっていますという方は、タイトルにあるように料理でも何でもよいので、何かに一緒に取り組んでみてはいかがでしょうか?一緒に何かに取り組むと、連帯感がより強くなります。また、その家族メンバーの、今まで知っていたのとは違う新しい側面に気づくかもしれません。

最近の子どもは宿題や塾・習い事などでふだん忙しくしていて、家事をあまりしてこなかった子が多いのではないでしょうか?特に男の子の場合、身の回りのことすべてを母親がしているケースが見受けられます。でも、それはその子のためにはならないでしょう。子どもはいつかは親の手を離れるわけなので、自活していける程度には誰もが家事を身につけておいたほうが、その子のためになるのです。全く家事ができない子なのであれば、最初はお手本を間近で見せる必要があるでしょうから、一緒にやったほうがよいでしょう。そして、ある程度慣れてきたら、その子自身に一人で何か役割をまっとうさせることです。その子の大好きな料理を、家の中にある材料をまず確認して足りない材料を買い物するところから、料理はもちろん後片付けまで、全工程をさせると達成感、自己効力感、自信は高まるように思います。見守るような心持ちで、子どもの自主性を重んじてやってみましょう。そして、結果的に何ができたのではなくて、その過程を楽しむ気持ちも大事だと思います。一緒に取り組んでいるのだというそのこと自体、家族で一緒にいる時間自体を慈しむ気持ちが、人生に幸せをもたらすのではないでしょうか?

なんだかんだいっても、家族はご縁のある人なのです。いつか今生でのお別れの日がくるまで、できればお互いに理解しあって、楽しく過ごしたいものです。

このコラムもいよいよ最終章となりました。最後は「大掃除などいつもはなかなかできないことに取り組む」です。ステイホームとはいってもご事情は様々でしょう。時間を持て余すようになった方ばかりではなく、かえって忙しくなった方もいらっしゃるようで、そのような方にはなかなか合わないかもしれませんが、これからに向けての話でもありますのでどうぞご一読ください。

コロナの影響が出始めるまでのこの数年間、私たちの社会は急ぎすぎていたのではないかと思います。何か疑問に思っても、ネットで検索すれば大抵のことは片付きます。何か伝えたいことがある時も、携帯やメールでさっと伝えることができます。便利ですし、さっさと終わるのでよいといえばよいのですが、一度立ち止まって感じ取る、そして自分の頭で考える機会は少なくなったと思います。次から次へと、どんどん急かされているようです。

ドラマが成立しにくくなっているという話も聞いたことがあります。ひと昔前は、誰かと待ち合わせして相手がこない場合、公衆電話を探して電話しても通じないと、そのまま待ち続けるか、可能であれば伝言を残して去るという選択しかありませんでした。そこにすれ違いやせつなさなどが生じる余地がうまれ、それがドラマを作っていたというところがあるでしょう。ところが今は携帯電話があるので、特に待ち合わせ場所をきっちり決めなくても大丈夫なくらいです。でも、いくら便利でも、別れ話をラインでしたなどという話を聞くと、私などは違和感を持ちますが、皆さんはいかがでしょうか?

自然も破壊されるスピードが早まってきました。夏は暑いし、冬は寒く、雨はどしゃ降りが続いたと思ったら晴れが続いて日照りが心配になるなど、ここ数年、気候変動が激しくなったのは誰もが感じているところでしょう。でも、私たちはこれまでの効率重視、経済重視の生活をついつい続けてきたのではなかったでしょうか?そこへ降ってわいたようにこのコロナの影響がではじめ、ベニスでは運河に白鳥が戻ってきたという話、タイではジュゴンの群れが確認されたという話があるようです。私たち人間が邪魔さえしなければ、自然は均衡を保つ方向へと進んでくれるのでしょう。いつも急いできた私たちはいろんなものを見直す時にきているのかもしれません。

私はつい最近、洋服の整理をして、こんなにいっぱいの服を持っていたのかと自分でも呆れてしまいました。暑くなってきて、必要に迫られてようやく腰を上げたのですが、春用の服が全然ない!着るものがない!と最初は思っていたのに、よくよく整理整頓してみると、ないどころか溢れるようにありました。まずやらないといけない日常のこまごまや、自分のやりたいことを最優先して、ある意味自転車操業でやってきたため、このような事態を招いたのであり、時々立ち止まって整理するのは本当に大事だと実感しました。

掃除については、少し前に「断捨離」が流行りましたね。私も思い出したように時々やっています。部屋の状態はそこに住む人の心の状態を反映しているというのは、その通りなのでしょう。忙しくなると部屋は雑然となってきますし、それを整理整頓すると気持ちもスッキリよくなります。ただ、私はこの「断捨離」も、その他の食養生などと同じく、ゆるゆるでやるほうがお勧めです。

周りにある品々はそれぞれの用途に使うだけではなくて、記憶を想起させるものでもあります。このおもちゃはあの頃にあの子が気に入って使っていたもので、とか、この旅行バックは京都に持っていったもので、とか、その時の情景を思い出して幸せの余韻にひたることもあるでしょう。認知症に効果があると言われる「回想法」を自前でやっているようなものだと思います。一方で記憶は、今の状況にいろんなフィルターをかけてしまう色眼鏡の元でもあり、それをクリーニングし消去する「ホ・オポノポノ」という癒しの手法も素晴らしいものだと思います。ただ、ヒプノセラピーをやっていて思うのは、一見トラウマなど負の記憶だと思われるものの周辺に、その人を救ってくれる資源のようなものがころがっている場合も多いということです。それもあってか、私はミニマリストにはなりきれない、捨てきれないところがあるのだろうと思いますが、まあ、これはバランス問題でしょうか?あまり詳しくは知らないのですが、ときめきをキーワードにする「こんまり」さんの片付け法に通じるところがありそうですね。

私は不妊体験をもっているので、漢方外来で子宝相談を受けることが多いのですが、瘀血(古血、血の流れが滞っている状態、西洋医学的には微小循環障害)が貯まっている方の場合、まずはいらないものを体から外に出してしまいましょう、と言います。そうやって駆瘀血剤を飲んでデトックスしてしまうと、硬かったお腹が柔らかく弾力のあるものに変わっていって子どもが授かるということが多くあります。それと同じく、コロナが終息する時をイメージして、どのような自分でありたいのか、その準備をするつもりで、まずは古い物、古い自分を整理整頓して、そして新しいものを呼び込みたいですね。コロナが終息するころには、今までとは全く違う世の中になっているのかもしれません。オンライン活用の流れなどになっていくのでしょうか?私はあまりネットなどには強くないですし、対面ならではのところがあると思っていたので、これまでオンラインでの講座やセッションには積極的ではなかったのですが、ようやく、やってみようかなという気持ちになってきました。遅まきながらですが、思い立ったが吉日、これから準備をしていこうと思います。

終わりに:この1カ月弱で16項目を綴ってきました。
日ごろ、診療や講座の中でお伝えしていることを連想するままに綴ったのですが、文章にすることで自分の中が整理できて、そうだったそうだったと改めて私自身がセルフケアをするよい機会ともなりました。

私たちの心と体には、自分で自分を治そうとする自己治癒力が確かにあります。免疫力はその一部です。コロナ対策としては、もちろん感染のリスクを減らす努力も大事ですが、最終的にはご自身の免疫力が問われることになるでしょう。皆さまの免疫力をアップさせるために、これまで綴ったことが一つでも役に立てばとても嬉しく思います。

ここまで読んでくださってありがとうございます。
2020年5月8日 よこやまクリニック院長 横山顕子